大飯原発継続 活断層棚上げは危うい


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 全国で唯一稼働している関西電力大飯原発3、4号機の運転が、9月の次期定期検査まで継続されることが濃厚となった。

 7月上旬に施行される原発の新しい規制基準に適合しているかどうかを確認するため、原子力規制委が現地調査を実施した。責任者の更田豊志委員が運転停止を求める問題はないとの認識を示した。
 大飯原発をめぐっては、規制委が2、3号機の間を走る断層が、地震の際に動く恐れのある活断層か否かを調べているが、新規制基準の施行前には結論を出せない。
 原発の安全性をめぐる最大の懸案である活断層問題を棚上げしたまま、規制委が運転継続の判断に傾くことに危うさを感じる。
 そもそも大飯原発3、4号機は、関西地区の電力不足への緊急対策が優先され、当時の民主党政権の“政治判断”で再稼働した。
 必要不可欠な安全対策とされる防潮堤や免震棟の建設は先送りされたまま、暫定的な安全基準をクリアした形になっている。仮免許のまま稼働し続けている状況だ。
 規制委は、定期検査まで運転継続を認める条件として新基準に基づく評価会合を4月から続け、その詰めとなる現地調査を実施した。
 規制委が耐震安全性を確保するため、三つの活断層が連動した場合の安全性を調べるよう求められた関電は再三「その必要はない」と突っぱねた。6月に入ってようやく「参考に計算した」というデータを提出した。
 規制委とのせめぎ合いの中で、関電は不誠実な対応を重ねた上で、活断層が連動しても耐震性に問題はなく、想定される最大の津波がきても安全性は保たれると報告している。
 科学的論争があるにもかかわらず、現地調査を経ても規制委側から異論が聞こえないのは不可解だ。大飯3、4号機の安全性評価は、新基準を用いた厳格な審査の在り方を問う試金石だが、運転継続の結論ありきに映ってしまう。
 これでは、規制委の信頼性が揺らぎかねない。
 原発再稼働は16日投開票された静岡県知事選でも争点となった。
 安全性が確保されていないとして、浜岡原発の現状のままの再稼働に異をとなえ、再稼働の可否を問う住民投票の実施を主張した現職の川勝平太氏が圧勝した。選挙結果には、原発再稼働に対する国民の根深い疑念を投影していよう。