トルコ危機 強権政治から脱却の時だ


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 反政府デモが続くトルコ情勢は、警察が最大都市イスタンブール中心部の公園を占拠していたデモ隊を催涙弾や放水車を使って強制排除し、全面衝突に発展した。

 政府側の強硬手段がデモを先鋭化させ、混乱を招かないか憂慮する。強制排除や力の衝突は憎しみを増幅させるだけで、問題の根本解決にはつながらない。政府もデモ隊も暴力は厳に慎むべきだ。
 今回のデモのきっかけは、公園の再開発計画に対する小規模行動だった。だが、矛先は今や酒類の販売制限やシリアの反アサド武装勢力への支援、政府によるジャーナリスト弾圧など、エルドアン首相の強権政治そのものに向けられている。
 デモ隊の中心組織「タクシム団結」には、自由や人権を重視する無党派層の若者だけでなく、反エルドアン政権で政治的な徹底抗戦を訴える左派勢力もいるようだ。
 首相批判が噴出している状況からして、政権とデモ隊の歩み寄りが難しいことは十分想像できる。
 エルドアン首相は、デモ隊に住民投票の検討や工事の一時凍結など譲歩案を示した。しかし、デモ隊は首相提案を拒否した。政権はすかさず「強制排除」に出た。もっと粘り強く対話を重ねるべきだ。
 トルコ危機は、公園での小競り合いの域をはるかに超え、反政府デモとして全土に国民の不満が充満している。国家の根幹を揺るがす事態だ。もはや公園の住民投票次元の収拾策で、各地の反政府デモが収まるとは到底思えない。
 エルドアン首相がなすべき事は首相支持派とデモ隊の対立をあおることではなく、国家危機を非暴力的手段で解決に導くことだ。間違っても国民を内戦状態に導くような愚を犯してはならない。
 首相は「独裁者」批判が絶えない一方で、03年の就任以来、着実に経済成長や少数民族への融和策などを実現。与党、公正発展党は民主的選挙で勝利して政権を維持し、この10年で国内総生産(GDP)を2倍以上に増加させた。トルコは、周辺国からは「穏健イスラムと民主主義、経済発展を調和させている」とモデル視される。
 首相が決別すべきは強権政治であって、民主国家の歩みを止めることでないのは自明だろう。あらためて問う。エルドアン首相は国民の求めに応じて退陣するか、民主的な選挙で正々堂々と信を問うか、自ら決断してもらいたい。