非婚世帯支援 税法改正の議論急げ


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 家計の苦しさが同じような二つの母子世帯をイメージしよう。母親に結婚歴のある世帯には支援があるのに、母親に結婚経験がない世帯は支援が受けられないとすれば、これは明らかに理不尽だろう。

 県が県営住宅の家賃で、結婚をせずに子供を産み育てている非婚の母子・父子世帯の減額規定を設けた。配偶者と離婚や死別した一人親の家庭には所得税法上の「寡婦控除」に基づき家賃が減額されるが、法律上の結婚を一度もしたことのない非婚世帯には寡婦控除が適用されないため、減額規定がなかった。
 寡婦控除の適用をめぐっては1月に日弁連が「非婚世帯に適用しないのは、法の下の平等を定めた憲法に反し、人権侵害に当たる」として、国や県などに適用を要望。2009年11月に那覇市の女性ら3人が日弁連に人権救済を申し立てていたいきさつがある。
 県が今回、独自に家賃規定を見直したことを評価したい。県内でもすでに先行している自治体があるが、さらに波及していくことが期待される。ただ同じ境遇のシングルマザー(ファザー)であるのに、婚姻歴の有無で不利益を受ける事例は家賃だけではない。
 寡婦控除とは、一人親世帯に対する所得税法上の措置で、課税所得から27万円(所得500万円以下は35万円)を控除する。所得額を基準に算定する住民税や国民健康保険料、公営住宅賃料などが安くなるが、婚姻歴が条件だ。
 独自の裁量で非婚世帯にも寡婦控除を「みなし適用」し、県内でも6市町が保育料を減らしているが、措置を知らない人も多いという。市民団体「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」の試算では那覇市の年収200万円の非婚世帯の場合、みなし適用がなければ住民税や保育料などを控除対象世帯よりも年31万円も負担している。
 国の調査では2011年の推計母子世帯数は123万世帯。うち非婚世帯は7・8%で増加傾向にあるが、平均年収は160万円と死別や離婚の家庭に比べても非常に厳しい。
 「寡婦」はもともと夫と死別した妻を想定した言葉で、専門家は「社会の変化に法律が追いついていない」と指摘する。結婚歴による差別はやはり憲法違反ではないか。子供の権利から考えてもおかしい。自治体の「みなし適用」は好ましいことだが、国が所得税法改正の議論を急ぐのが筋だろう。