ワクチン推奨中止 検証急ぎ対策の確立を


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 ワクチンが病気を防ぐ効果と副作用のリスクをどう測るか。古くて新しい問題がまた提起された。

 厚生労働省はこの4月から原則無料の定期接種としたばかりの子宮頸(けい)がんワクチンについて、接種の推奨を一時中止するよう自治体に勧告した。接種後、激しい痛みやけいれんなど副作用と疑われる例が相次いだためだ。
 医学的な因果関係は不明だが、実態解明が進むまでは積極的に勧めるべきでないと判断した。リスク回避を優先した慎重な判断を支持したい。一方で現場の混乱も憂慮される。国は症例の情報収集を急ぎ、検証を徹底して速やかに公表してほしい。
 子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が主因とされ、近年、日本でも急増している。
 その対策としてワクチンが2006年に米国で承認され、欧米では時を置かず公的接種の対象となった。既に100カ国以上で1億人が接種したとされる。日本でも10年度から公的助成が始まり、今年3月に原則無料の「定期接種」とする改正予防接種法が成立した。
 だが接種が始まった3年前から副作用を疑う声が上がっていた。肩が激しくけいれんし、止まらない。睡眠中に無意識に歩き回ったり、足がばたついたり、車いすを使うに至った例すらあるという。
 副作用が疑われる例は厚労省の報告で1968件、うち重篤な症例は106件で、接種約8万回に1回の割合だ。日本脳炎ワクチンよりは低いもののインフルエンザワクチンより高いのは無視できない。被害者団体の調査で、厚労省が把握していなかった例があった点からしても、被害を過小評価してはならないだろう。
 一方、接種は、日本ではさほど多くない筋肉注射で行われることから、副作用はワクチンでなく筋肉注射が原因と疑う声もある。情報収集と検証が急がれるゆえんだ。
 子宮頸がんは20~30代女性では乳がんの次に多く、日本でも毎年9千人近くが発症し、2700人前後が死亡している。今回の措置でワクチン接種が激減し、将来、深刻な影響が出るのを危ぶむ意見も根強い。
 そもそもこのがんは定期検診による早期発見の有効性が高いとされる。検診の受診率が欧米では8割なのに日本では2割と極端に低く、これが死亡率を上げていると指摘される。こうした点の啓蒙(けいもう)も含め、国は対策を確立してほしい。