G8サミット 課題解決の機能強化を


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 成果の乏しい会議だったとの印象は否めない。主要国(G8)首脳会議(ロックアーン・サミット)が閉幕した。多国籍企業の脱税阻止に取り組むと確認する成果はあったが、焦点のシリア情勢は意見調整がつかず、経済面も現状容認の姿勢ばかりが目立った。

 新興国を含む主要20カ国・地域(G20)は対立が露呈しがちで、膝詰め協議がしやすいG8を再評価する機運が高まっていたが、期待に応えたと言うには程遠い。国際協調で世界的課題の解決を図る機能を、どう構築するかが問われている。
 安全保障面で唯一と言っていい成果は北朝鮮に「核・ミサイル開発計画の不可逆的放棄」を求めた点くらいだが、日本の熱心な訴えを「聞き置いた」程度だというのが実態だろう。各国が本気で放棄を迫るという迫力はない。
 シリア情勢は、アサド政権をロシアが、反体制派を米欧が支援する構図は解けず、内戦終結への道筋を描くどころか、和平に向けた協議の設定すらできなかった。
 米欧の足並みも乱れ始めた。反体制派への武器供与を米国が決め、欧州も前のめりだったが、反体制派内の過激派に武器が渡る懸念が高まっているからだ。
 その懸念は正当ではないか。そもそも武器供与は戦争を拡大こそすれ抑える方向に働くとは思えない。軍需産業の「在庫一掃セール」の思惑すら感じる。国際非政府組織が唱えるように、「武器供与でなく対話による政治的解決」をこそ、各国は追求すべきだ。
 化学兵器を使用したのはアサド政権か反体制派か。各国の見方は分かれ、統一見解に至らなかった。国際社会はまず徹底した調査を進めてほしい。同時に、政権側と反体制派の双方に和平協議を強く促し、日程を具体化すべきだ。
 今サミットで本来、徹底して議論すべきだったテーマはほかにもある。米国家安全保障局による個人情報収集の実態解明と、その是非だ。
 くしくも英国の機関による盗聴問題も発覚した。特定の国が他国の通信を盗聴する現状が、公平・公正な世界と言えるのか。各国は堂々と論議すべきだった。
 各国とも議論を準備する「シェルパ」の機能が衰えているのではないか。単なるパフォーマンスに終わらせないよう、前もって各国が徹底的に議論し、実質的に調整する機能を構築してもらいたい。