原発規制新基準 再稼働ありきで進めるな


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 原子力規制委員会が地震、津波対策などを強化した原発の新規制基準を正式に決定した。新基準は7月8日に施行する方針で、電力4社が7月中にも、最大6原発12基で再稼働に向けた安全審査を申請する見通しという。

 原発に対する国民の見方が依然厳しい中で、再稼働ありきで、拙速に事が進んでいる印象が拭えない。電力会社の動きは、新基準をあたかも再稼働へのゴーサインととらえているかのようだ。しかし、新基準は再稼働のための“免罪符”であっては断じてならない。
 新基準は福島第1原発事故の教訓を生かしてまとめたという。これまで電力各社の自主的な取り組みに委ねられていた、放射性物質の大量放出などの過酷事故対策を義務付けたことなどが特徴だ。
 しかし、国民の多くが福島第1原発事故から学んだ教訓は、原発の安全対策以上に、原発への依存度を減らし脱原発を図ることだ。そして、再稼働は認められないという思いはその第一歩だ。
 ことし5月の全国電話世論調査でも、原発再稼働に反対する人の割合は54・3%で、賛成の37・2%を大きく上回っている。
 福島第1原発は使用済み核燃料や汚染水関連などのトラブルが続き、いまだ事故は収束を見ていない。それに加え、M8以上が想定されている南海トラフ巨大地震など、将来的な地震・津波災害への不安が世論に反映している。
 高レベル放射性廃棄物の処分方法など、原子力政策の将来像も不透明なまま再稼働に道筋を付けることに不安を感じている国民も多い。原発事故で苦悩が続く人々の生活再建がなされない中で、原発が再稼働されることへの戸惑いや怒りも見えてくる。
 こうした世論に挑むような、安倍政権の姿勢には懸念が募る。原発再稼働に強い意欲を見せているほか、原発の国外輸出にも躍起になっている。そこに慢心はないか。
 自民党の高市早苗政調会長は17日の講演で「福島第1原発で事故が起きたが、死亡者が出ている状況ではない」として、原発再稼働に意欲を示した。その発言に、福島事故の教訓を忘れ、原発依存に回帰する安倍政権の姿が重なる。
 再稼働は世論を無視して推進されてはならないはずだ。「フクシマ」から何を教訓として生かすのかが、あらためて問われている。