米戦略核削減 核廃絶の道筋を示せ


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 「核兵器のない世界」の実現に向けた強い意欲の表れなのだろう。今後、指導力を具体的にどう発揮するのか注視したい。

 オバマ米大統領は、ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)に基づき1550発まで減らす配備済み戦略核弾頭を、さらに最大3分の1減らし、千発水準にする用意があると表明した。
 オバマ氏は「核なき世界」を提唱し、約4年前にノーベル平和賞を受賞した。輝かしい賞に値する実績は果たして残されたのか。国際社会の厳しい視線と新方針は決して無縁ではあるまい。
 ただ、追加的な削減が実現するかは、交渉相手となるロシアの対応も鍵だ。オバマ氏の表明に対し、ロシアのリャプコフ外務次官は、欧州ミサイル防衛(MD)計画で米側の譲歩が前提条件となる見解を示し、現時点で事実上拒否した。
 ロシアは、MD計画が自国の核抑止力を低下させると強く反発している。17日のプーチン・ロシア大統領とオバマ大統領との会談では、MDをめぐる対立は解消されなかった。
 米ロが厳しく対立する案件は核軍縮が絡むMDにとどまらず、シリア内戦やイラン核問題など多岐にわたる。いずれも喫緊の課題であり、米ロ両首脳の信頼構築が、問題解決に向けた第一歩となることを肝に銘じる必要がある。
 今年9月にはモスクワで米ロ首脳会談が予定されるが、懸案事項を着実に進展させるよう両首脳の積極的な外交努力を求めたい。
 一方、米ロに加え、フランス、英国、中国の5カ国だけに核兵器の独占を認める核拡散防止条約(NPT)の枠内で核軍縮を進めることの限界も指摘される。
 今年3月には、ノルウェー政府が主催する「核兵器の非人道性に関する国際会議」が開かれ、日本を含む127カ国が参加したが、世界の核兵器の95%以上を持つ5核保有国は不参加だった。
 「従来、進めてきた段階的な核軍縮措置からエネルギーを奪う」と5カ国は共同でボイコットしたが、極めて理不尽な理由であり、核廃絶に率先して取り組むべき核保有国の見識を疑う。
 そもそも核軍縮や核不拡散だけでは核なき世界の実現は望むべくもない。オバマ氏は核廃絶に向けた明確な道筋を示してこそノーベル平和賞にふさわしいと言える。