防災白書 危険を認識し備えよう


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 東日本大震災の教訓を風化させることなく、国と地方が考え得る対策に総力を挙げて取り組み、大震災に原発事故が重なる複合災害も含めて備えを急ぎたい。

 政府は21日、2013年の防災白書を閣議決定した。大規模災害に備えるには、国や地方自治体だけでなく住民や地域が連携して対策をとることが重要と強調した。
 巨大津波に備える防潮堤や避難路、避難タワーなどのハード整備は国や自治体などが担うべきものだ。併せてハードを生かすソフト対策が極めて重要だからだ。
 いわゆる被害を最小化する「減災」に向け、独自で避難が困難な高齢者や障がい者らの把握や、危険から速やかに逃げるための避難訓練など、企業も含めて住民や地域の連携が不可欠と言える。
 特に巨大災害では、交通網や通信・電力などのライフラインが各所で分断され、地域や集落が孤立するケースが想定される。被災地外からの救援もままならず、生活物資も枯渇しかねない。
 こうした非常事態に備え、全国では住民による自主防災組織の設置が進んでいる。ただ、白書によると、活動の対象とする世帯のカバー率は地域差が大きい。この課題の克服が急務だ。
 消防庁の調べでは、2012年の都道府県別のカバー率は、兵庫96%、山梨、愛知95%と高いのに対し、沖縄は11%にとどまり全国ワーストとなっている。50%を割り込んだのは、青森33%、長崎46%と沖縄を含め3県だけだ。
 沖縄は地震が少ないとの声もあるが、迷信にすぎない。日本列島は地球のプレート(岩板)が4枚もせめぎ合うが、沖縄はユーラシアプレートのへりにあり、専門家らは「巨大地震や大津波がいつ発生してもおかしくない」と指摘する。
 県民の間に「沖縄は大丈夫」との何ら根拠のない楽観論がはびこっているとすれば、極めてゆゆしき事態だ。防災意識を啓発すべき県や市町村の姿勢も問われる。
 地震や津波が発生した際に地域住民に情報を伝達し、避難に生かす仕組みはどうなっているのか。観光立県だけに、観光客や外国人に配慮した取り組みも必要だ。
 食料や燃料の備蓄体制の整備も不可欠だ。国や自治体任せではなく家庭、地域、学校、企業のそれぞれが、自らの役割や対策を総点検することから始めたい。