首相あいさつ 胸に刻むなら県外移設を

 「沖縄が忍んだ犠牲、人々が流した血や涙が、自分たちを今日あらしめていることを深く胸に刻んで、静かに頭(こうべ)を垂れたい」

 美しい言葉にもかかわらずか、それだからこそなのか、沖縄全戦没者追悼式での安倍晋三首相のあいさつは空疎に響いた。それは、沖縄県民の切実な思いに正面から向き合っているようには到底見えなかった。
 首相は「沖縄の人々に刻み込まれた心の傷はあまりにも深く」として、沖縄戦と戦後の苦難の歴史に触れた上で、米軍基地負担を「少しでも軽くするよう、全力を尽くす」と述べた。
 沖縄県民の心の傷を踏まえて基地負担の軽減を図ると言うのなら「普天間」「オスプレイ」などに触れてしかるべきだろう。
 首相あいさつに「普天間」などの文言は一切なかった。それなのに追悼式後の会見では、米軍普天間飛行場の固定化回避を理由に名護市辺野古への移設を進める考えをあらためて示唆した。
 仲井真弘多知事は追悼式の「平和宣言」で、沖縄戦の教訓を踏まえた上で、日米両政府に対し普天間飛行場の県外移設と日米地位協定の抜本的見直しを求めた。
 それが戦没者への慰霊、戦没者の思いに報いることであり、大多数の県民が望む切実にして最低限の要求でもあるからだ。
 首相のあいさつや会見での発言は、知事や県民の要求をかわすことだけを考えているかのようだ。「より深く理解し、常に思いを致す」といくら言葉を弄(ろう)しても、導く結論が普天間県内移設である限り、戦没者を含めた県民の思いに寄り添ったことにはならない。
 追悼式には外相と防衛相が初めて出席したほか、駐日米大使が18年ぶりに参列した。日米政府挙げて沖縄に配慮する姿勢を示したつもりだろうが、普天間の辺野古移設強行の布石ならば、追悼式の政治利用と言われても仕方がない。
 基地の過重負担が続く限り、沖縄戦は終わらないとも言える。そして過重負担軽減の最たるものが、普天間飛行場の県外移設・早期返還だ。
 「戦争を憎み、平和を築く努力を惜しまぬ国民として」「未来に光明を求める歩みを始めなくてはならない」。首相はこうも述べた。これも美辞麗句にすぎないのか。そうではないのなら、首相は県民の思いを真摯(しんし)に受け止めて「県外移設」へと踏みだすべきだ。



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