少子化対策 家族、職場の支援も必要だ


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 政府が2013年版「少子化社会対策白書」を閣議決定した。白書では週60時間以上の長時間労働をしている男性の割合を世代別に見た場合、子育て世代の30代が18・2%で最も高いと指摘した。

 こうした労働環境が男性の育児参加を制約し、少子化に拍車を掛けないか危惧する。若い世代の働き方の改善まで踏み込んで、この国の少子化対策を根本から見直す時だ。
 6歳未満の子どもを持つ夫の家事と育児に費やす時間は1日平均1時間だ。スウェーデンの3時間21分を筆頭に米国、ノルウェー、ドイツは3時間を超える。日本は欧米の3分の1で低水準だ。
 厚生労働省の11年度の調査で、男性の育児休業取得率は2・63%で、女性の87・8%と比べ極端に低い。育児が女性に重くのしかかっている現状を変えなければ、少子化に歯止めをかけられまい。
 厚労省の調べで夫の休日の家事、育児時間が長いほど、2番目の子どもの出生率が高くなっているとの調査結果もある。例えば、夫の育児時間が2時間未満の場合は第2子の出生ありは3割未満だが、6時間以上だと7割近くまで増えていた。夫の育児参加が出生率を左右している証左と言えよう。
 11年の母親の第1子出産時の平均年齢が30・1歳で、初めて30歳を超えた。なぜ晩産化が進むのか、晩婚化や子育てをめぐる環境など、多角的な検証が必要だろう。
 日本の子育て支援策は、世界と比べても不十分だと言わざるを得ない。07年の国内総生産(GDP)のうち家族関係社会支出の割合をみると、日本は0・79%だ。これに対しスウェーデン、英国、フランスは3%を超える。家庭への財政支出があまりにも手薄だ。
 政府は今月7日に「少子化危機突破のための緊急対策」を決定した。これまでの「子育て支援」と「働き方改革」の強化に加え、「結婚・妊娠・出産支援」を対策の柱として打ち出した。
 結婚、妊娠、出産は当然、個人の自由な選択が優先されるべきだ。一方で少子化による人口構造の変化は社会経済システムの根幹に関わり、いきおい少子化対策は経済成長を左右する課題と言える。
 少子化対策は党利党略を排除し、個人の選択の自由と社会的意義に慎重に目配りしながら進めるべきだ。家庭・地域・職場で子育て支援策について議論を深めたい。