「0増5減」成立 第三者機関が抜本改革案を


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 1票の格差が憲法違反の状態にありながら、政党の利害にとらわれ、最優先で取り組むべき課題さえまとめられない。国会の責任放棄そのものである。

 改革に背を向けた機能不全ぶりを見ると、定数削減や選挙制度改革を国会に委ねていては、違憲状態の根本的解決は不可能だろう。
 衆院小選挙区の定数の「0増5減」に伴い、区割りを改定する改正公選法が、衆院の3分の2以上の賛成によって再可決された。参議院に送られてから60日以内の法案採決が見送られたため、憲法59条が定める「みなし否決」が自民、公明、民主などの賛成で認定された。党利党略が前面に出て、参院では審議すらしない醜態をさらけ出した。
 佐賀、高知、徳島、山梨、福井の5県の小選挙区定数を各1議席ずつ減らした。選挙の最も重要な要素である区割りが、衆院だけで決められた。与野党双方に主張があろうが、異常事態そのものだ。
 改正法は、1票の格差をめぐり、最高裁判決で、2009年の衆院選が「違憲状態」と突き付けられたことを踏まえたものだ。
 昨年11月、自民、公明、民主3党は衆院選挙制度の抜本改革を断行すると合意し、国会は選挙制度改革関連法を成立させた。だが、区割り改定は間に合わず、12月の衆院選は違憲状態のまま、実施されてしまった。
 案の定、相次いで起こされた1票の格差是正訴訟で、各地の高裁は「違憲」「違憲状態」と判断し、選挙無効の判決も出た。
 今回の区割り改定により、1票の格差が1・998倍となり、2倍をかろうじて下回った。だが、国民との約束である一層の定数削減や抜本的な選挙制度改革は全く進まず、先送りされた。
 「0増5減」は一時しのぎの応急措置にすぎない。ことし3月の推計人口ベースでは既に1票の格差が2倍を超える選挙区がある。
 抜本改革に臨まない限り、選挙のたびに格差是正論議で時間を浪費し、違憲状態のまま、選挙が続く悪循環を断ち切れないだろう。
 小選挙区制は死に票が多くなり、投票で示される民意が各党の獲得議席に反映されづらい。その功罪の検証が迫られている。
 もはや国会だけに任せてはおけない。選挙制度改革は、権威ある第三者機関の主導で民意を十分生かす方策を早急に打ち出すべきだ。