中韓の接近 首相は外交立て直し急げ


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 韓国の朴(パク)槿恵(クネ)大統領が就任後初めて中国を訪問し、習近平国家主席と首脳会談を行った。両首脳は「朝鮮半島の非核化」を目指す考えで一致し、自由貿易協定(FTA)の早期締結も確認。緊密な関係を誇示したが、日本は置き去りにされているように映る。

 歴代の韓国大統領は就任後に米国、日本の順に訪問してきたが、朴氏は慣例を破り、中国を先に訪問した。北朝鮮の挑発に断固対応しつつ、緊張緩和を模索する自身の政策「朝鮮半島信頼プロセス」の実現に向けて、中国の支持は欠かせない。
 一方の中国には対米外交をにらみ、FTAを核に韓国を取り込みたいとの思惑もあろう。韓国にとって中国は最大の貿易相手国で、経済面でも日本より対中関係を重視したいとの判断が成り立つ。
 ただ両国間の連携加速は、歴史認識や領土などの問題で日本との関係が悪化していることと無関係ではあるまい。中韓両国が蜜月をアピールする分だけ、「日本外し」の構図が際立つ。中国側には東アジアでの日本の孤立を国際社会に印象付けたい狙いもありそうだ。
 両国には安倍晋三首相に対する警戒感がある。首相は昨年12月の再就任から、持論である憲法9条改正や国防軍創設など保守色の強い主張は極力控え、両国に配慮する姿勢も示すが、そうした「努力」も閣僚や国会議員の靖国神社への集団参拝などで水泡に帰している。
日本維新の会の橋下徹共同代表の従軍慰安婦問題などをめぐる発言も日本への不信を増幅させた。
 隣国との関係改善が進展しない一方で、頼みとする米国との関係も盤石には見えない。主要国(G8)首脳会議期間中、安倍首相が模索していた日米首脳会談は見送られた。オバマ米大統領の都合がつかなかったためとされるが、日米同盟関係のアピールを目指した首相の思惑は外れた形だ。歴史認識をめぐる首相らの言動が日米関係にも影響しているとも伝えられている。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合出席のため29日からブルネイを訪問する岸田文雄外相が、韓国の尹(ユン)炳世(ビョンセ)外相との会談や中国の王毅外相との接触を検討している。日韓外相会談が実現すれば安倍政権発足後初めてだ。
 安倍首相は民主党政権時代を批判し「外交・安全保障の立て直しが急務」と強調してきたが、その約束を急いで果たしてもらいたい。