埋め立て申請縦覧 国の秘密主義は論外だ


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 米軍普天間飛行場代替施設の名護市辺野古への建設に向けた沖縄防衛局提出の公有水面埋め立て申請書の告示・縦覧が始まった。埋め立て工事費が2310億円規模だと初めて示された。また埋め立てに使う土砂の採取場所も初めて具体的に明示された。

 これらは当初の申請書には記されていなかった。県が防衛局に追記するよう補正要求したため、初めて盛り込まれた。要求されるまで情報を出さない国の態度は秘密主義にほかならず、論外だ。
 当初の申請書では採取場所を「沖縄、九州、瀬戸内海」としか表記していなかった。ところが防衛局は2009年時点で土砂採取候補地の詳細な調査を実施していた。防衛調達基盤整備協会が10年に提出した報告書に候補地が具体的に示されている。今回、補正で追記された採取場所の大半は4年前の調査した候補地と重なる。なぜ最初から盛り込まなかったのか。不誠実な国に猛省を求めたい。
 その理由ともいえる防衛局の本音が、報告書にある「資材調達検討委員会」の議事録に記されている。防衛局は県内の採取場所について「沖縄での風当たりを考えると、あらゆる造成工事がアセス法違反だと言われる恐れがある」と発言している。沖縄の批判をかわすために情報をひたすら秘匿しているとしか思えない。
 議事録で、防衛局は土砂調達方法について事業主体が採取すると環境影響評価(アセスメント)の対象となるが、購入すれば対象外になることに触れながら「土砂は購入する」との方針を示している。申請書の調達方法は大半が「購入」となった。アセス回避と言われても仕方ない。「環境の保全のための措置を取る」との環境影響評価法を骨抜きにすれば、国が普遍的価値と喧伝(けんでん)する「法の支配」にもとる行為だと指摘せざるを得ない。
 不明な点はほかにもある。埋め立て工費は示したが、飛行場を含む総事業費は示していない。飛行場完成の工期は5年と説明しているにもかかわらずだ。実際は飛行場の積算も完了しているが、情報を隠しているのではないか。国の対応は、ずさんなことだらけだ。このような案件を日米合意だからと言って、これ以上無批判に進めることは甚だ疑問だ。辺野古移設そのものを断念し、普天間の閉鎖・撤去を真剣に検討すべきだ。