再生エネの台頭 世界に取り残されるな


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 風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーの世界的台頭が一層くっきりした。もはやこの流れを押しとどめることはできまい。

 国際エネルギー機関(IEA)のまとめによると、再生可能エネルギーによる発電量は、2016年に天然ガス火力発電を超え、石炭火力に次ぐ第2の電源となる。6兆1千億キロワットの発電量は、原子力発電の2倍になる。
 世界を震撼(しんかん)させた福島第1原発事故の発生国であるにもかかわらず、事故からわずか2年余で原発再稼働や原発輸出の再推進に突き進む日本の姿は世界からどう映るだろうか。
 脱原発を一層推し進め、クリーンエネルギーに傾斜する世界の流れから取り残されてはならない。
 原発事故に伴う放射能汚染の懸念を抱かずに済み、人間と自然に優しい再生可能エネルギーを求める動きは世界の潮流となった。
 研究をてこにしたコスト低減も進み、風力や太陽光発電が飛躍的に発電量を伸ばしている。IEAによると、再生可能エネルギーによる12年の発電量は4兆8600億キロワット時で、前年比8・2%の高い増加率を示した。石油、石炭など他の電源と比べ成長が飛び抜けている。18年には12年比で約4割増となる試算がある。
 こうした中で、日本の実情は目を覆うばかりだ。安倍晋三首相は、インドへの原発輸出を可能にする原子力協定の早期妥結で合意し、フランスとも新興国への輸出推進で足並みをそろえている。
 首相は国民の約7割が支持する脱原発に背を向け、原発再稼働に道筋を開き、将来的な原発温存に傾いている。
 電力供給の自由化などを目指した電気事業法改正案は、国会終盤の首相問責決議をめぐる与野党の攻防の末、廃案になった。
 現行制度では、半ば独占的に発電設備と送配電網を持つ電力会社が、一般消費者に高い電気料金を課しているため、省エネや再生エネルギー導入が諸外国に比べ、大きく遅れた。
 挽回の足掛かりとなるはずだった法案は廃案となり、改革はさらに遅れる。発送電を分離しないと、競争原理が働く異業種参入が進まず、電力価格は高止まりし、再生エネ導入が滞る悪循環が続く。
 脱原発の先頭に立ち、再生可能エネルギー分野で世界に貢献することが、未曽有の原発事故を起こした日本の責務のはずである。