負担軽減策 具体化すべきは県外移設


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 どうしても「スタンドプレー」に見えてしまう。日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長や幹事長の松井一郎大阪府知事らの最近の言動には違和感だけが募る。

 両氏は関西広域連合の会合で、米軍の新型輸送機MV22オスプレイの訓練の一部受け入れが可能かどうかを全国で早急に検討して具体策を示すよう、政府に申し入れるべきだと提案した。
 米軍基地の過重負担の軽減を求める沖縄県民の世論をくみ取ってのことのようだ。しかし、本当に民意に応える気があるのなら、訓練ではなく、オスプレイそのものの受け入れを提起すべきではないのか。
 オスプレイ訓練の全国分散が負担軽減策の一つであることは確かだろう。しかしそれは、あくまでも一部でしかない。しかも、沖縄配備が前提だ。これで負担軽減が進むと本気で思っているのか。
 そもそも、負担軽減の具体策として沖縄県民が切実に求めているのは米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去、県外・国外移設だ。なぜそこを素通りするのか。
 橋下氏らの負担軽減策は普天間の名護市辺野古移設・新基地建設が前提だ。これではどんなに「負担軽減」を声高に言っても、沖縄を「失地回復」のために利用しているようにしか映らない。
 案の定、関西広域連合会の会合では異論が出て、橋下氏らの提案は同意を得られなかった。真意を見透かされているのだ。従軍慰安婦をめぐる発言などで、橋下氏自身が信頼と支持を失っている。とても共感は集められない。
 こういった状態で、橋下氏らが沖縄の民意と乖離(かいり)して負担軽減策を論じることは、沖縄の基地問題の本質をゆがめ、問題解決を遅らせるだけである。
 ただ橋下氏らの発言を、個人の資質や性格の問題に矮小(わいしょう)化して済ましてもなるまい。
 普天間移設問題では、鳩山由紀夫元首相の「最低でも県外」との発言が沖縄県民に幻想を抱かせたとの主張が、国民の間で幅を利かせている。沖縄問題は「宇宙人」や「異端児」しか言わないと個人の責任に転嫁され、県外移設や負担軽減などできっこないといった風潮が醸成されないかとの危惧もある。
 その意味からも、橋下氏らの発言の責任は重い。沖縄の民意を無視して進むこの国の政策を改める気概こそ、政治家に求めたい。