12機追加配備 民意を無視して民主国家か


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 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が8月上旬にも普天間飛行場に追加配備される見通しとなった。防衛省が7月28~31日に山口県の岩国基地に搬入されると正式発表した。配備撤回を求める沖縄の民意に背を向けた暴挙であり、到底容認できない。

 昨年10月に12機が強行配備された後、県内では41の全市町村長と知事が反対を表明し、全市町村議会と県議会が反対決議をしている。今年1月には県議会や41市町村が配備中止を求める建白書を安倍晋三首相に提出し、6月には仲井真弘多知事が安倍首相に配備撤回を直接求めている。にもかかわらず追加配備を強行することは、沖縄の声など切り捨てて構わないという政府の意思の表れだ。沖縄には自己決定権はなく、民主主義も適用しないと言っているに等しい。
 県と宜野湾市に追加配備の方針を伝えたのは沖縄防衛局の企画部長だ。山口県と岩国市に搬入方針を伝えたのは防衛政務官だ。オスプレイを常駐させる自治体には公務員を向かわせ、1週間程度だけ搬入させる自治体には政務官という大臣、副大臣に次ぐ要職の国会議員を向かわせた。沖縄軽視の差別的取り扱いではないか。
 疑問点はほかにもある。日米両政府は昨年9月、沖縄の負担軽減を名目に低空飛行訓練とは別に県内実施の訓練の一部を県外に移転することで合意した。しかし10カ月たっても実現していない。訓練移転について防衛省幹部は県道104号越え実弾砲撃訓練の移転交渉と比較しながら「今回はもっと厳しい状況になる」と話している。受け入れ先の自治体との交渉が難航するとみているようだ。自治体全てが反対している沖縄にはためらいなく配備を強行し、県外自治体には同意を求めて交渉する。沖縄差別以外の何物でもない。
 県の指摘では12機が配備された昨年10月以降、日米間で合意した安全確保策に照らして318件の違反飛行が確認されている。しかし「運用上必要な場合を除き」との例外規定があり、日米双方とも合意違反はないとの姿勢だ。これでは何をしても構わないということになる。安全確保策など絵に描いた餅だ。
 昼夜問わず激しい訓練を繰り返すオスプレイの数が現在の2倍になれば被害も増すのは確実だ。政府は沖縄の声に真摯(しんし)に耳を傾け、米側に配備撤回を求めるべきだ。