参院選公示 公約の重み再認識を 基地、憲法で論戦尽くせ


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 第23回参院選はきょう4日に公示され、21日の投開票日に向けて激しい論戦が展開される。

 昨年末の安倍政権発足後、初の本格的な国政選挙だ。経済政策の「アベノミクス」をはじめ、憲法改正、原発政策、環太平洋連携協定(TPP)、消費税増税などの重要施策をめぐり、国民がどのような判断を示すのか注目される。
 沖縄の立場からは特に、米軍普天間飛行場移設や米海兵隊垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ追加配備などの基地問題が注目点だ。各政党、立候補者は堂々と論戦を展開し、有権者の選択に資する展望と方向性を示してもらいたい。

 期待と副作用

 アベノミクスは急速な円安、株高をもたらし、景気回復への国民の期待を高めている。半面、国債市場の混乱や燃料、食料品の値上げなど「副作用」も出始めている。
 中小零細企業の業績回復はままならず、勤労者の賃金も上がる兆しは見えてこない。アベノミクスの成否は国民の大きな関心事だ。この機会にきちんと検証する必要がある。財政健全化についても、どの政党が具体的な再建策を提示しているのか吟味したい。
 自民党の憲法公約は天皇の元首化や自衛権を明記し、「国防軍」創設を掲げている。ほかの党も加憲、護憲と主張はさまざまだ。
 参院選の結果次第では憲法改正の動きが具体化する。戦後民主主義の根幹を成した現行憲法はまさに重大な岐路にあり、今選挙の歴史的な意味をかみしめたい。
 安倍政権は原発の国外輸出を推進し、国内の原発再稼働にも意欲を示している。未曽有の大震災や原発事故を経験した教訓から導き出された原発ゼロ社会の実現に背を向け、原発依存方針へとあからさまに回帰している。
 原発への対応やエネルギー政策などについても、どの政党や候補者が責任と実効性ある政策を打ち出しているのかを見極めたい。
 外交では尖閣諸島の領有権問題や歴史認識問題で、中国や韓国との緊張関係が続いている。こうした中、外交問題に基地問題を絡め、普天間辺野古移設やオスプレイ追加配備が押し付けられようとしているが、県民の大半はいずれもこれを拒否している。
 こうした問題に、選挙で沖縄県民としてどのような意思を示すのか、まさに正念場にある。
 沖縄選挙区には4人が立候補する予定だが、社大党委員長で現職の糸数慶子氏(65)=社民、共産、生活、みどりの風推薦=と、自民党新人で社会福祉法人理事長の安里政晃氏(45)=公明推薦=の事実上の一騎打ちとなりそうだ。

 中央とのねじれ

 憲法改正では、糸数氏が9条の堅持を訴えて改憲反対の立場。これに対し安里氏は、自衛隊を憲法に明記して文民統制を強化する必要があるとして改憲に賛成しており、両者の主張、価値観の違いが鮮明になっている。
 一方普天間問題では、事実上両氏とも県内移設に反対し、主張に大きな違いはないように映る。
 しかし、普天間問題で自民党県連は、参院選の地域版公約をまとめた「ポイント集」で県外移設を明記したが、党中央は名護市辺野古移設推進を公約に抱え、ねじれ状態で選挙戦へ突入する。
 公約破りがいかに致命的な結果を招くかは、普天間問題で「最低でも県外」から県内移設に転換した民主党の例を見ても明らかだ。
 公約の重みがあらためて問われる。有権者への約束を守らない、守れない政治が、この国の民主主義の質と信頼を低下させていることを各政党、各候補者とも再認識し、選挙戦に臨むべきだ。
 このほか、沖縄振興策や医療福祉、子育て支援など、生活に密着した課題についても論戦を繰り広げ、選挙戦を活発にしてほしい。
 インターネットを活用した選挙運動が解禁となる。投票率低下は民主主義の危機だ。ネットで政策の浸透を図り、選挙への関心を高めて投票率アップにつなげたい。