参院選・経済・財政(上) 成長戦略の具体策を競え


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 長らく低迷する景気の回復は国民の誰もが切望するところだ。少子高齢化と人口減少が急速に進む中、企業や家計の明るい将来展望をどう描くのか。各党は国民に分かりやすく提示してもらいたい。

 今参院選は、安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の是非も大きな争点の一つだ。与党は円安株高を加速させた実績を強調し、野党は食料品の値上げなどの副作用に批判を強める構図だ。
 アベノミクスによる大胆な金融緩和は、円安株高を誘い、大企業を中心に景気回復への期待を高めた。半面、国債市場の混乱や、原材料価格の上昇、電気料金の値上げなど家計や中小零細企業を圧迫する。安倍首相は実績をアピールするだけでなく、副作用への処方箋も提示する必要がある。
 アベノミクスは現段階で、メリット、デメリットの双方がある。ただ、言えることは、デフレ脱却と経済再生への道のりは緒に就いたばかりということだ。国民本位の経済政策はどうあるべきか。与野党には目先の損得勘定ではなく建設的な議論を強く求めたい。
 アベノミクスは金融緩和、財政出動、成長戦略を「三本の矢」と称し、早期のデフレ脱却による日本経済の再生を目指す。円安株高は、市場の期待の大きさの表れだ。ただ、設備投資や雇用拡大など実体経済に結び付くのか、地方経済や国民全体にまで恩恵が行き渡るのかは、いまだ不透明だ。
 鍵を握るのは、第三の矢である成長戦略であることは論をまたない。これは何も安倍政権の専売特許ではなく、民主党政権を含め歴代政権が財政再建と併せて課題に掲げてきた。いわば、古くて新しいテーマであり、成長戦略の着実な実行なくして、経済再生はないと肝に銘じたい。
 再生医療や介護、健康、農業、再生エネルギーなど、新たな成長分野の芽を育てる施策はどうあるべきか。既存産業の競争力強化やアジアなど海外の経済成長を取り込む戦略も欠かせない。
 企業の活性化や創業を促せば、雇用が拡大し、働く人の給与が増え、家計が潤う。消費の拡大は企業収益の改善につながり、新たな設備投資を呼ぶ。いわゆる景気の好循環が待たれて久しい。各党は地方の経済活性化策を含め、成長戦略の具体的な政策で競い合ってもらいたい。