慶良間が国立公園へ 宝の海を守り生かそう


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 貴重なサンゴ礁が広がる慶良間諸島沿岸海域の保護を強化するため、国は2013年度中にこの海域を国立公園に指定する方針だ。石原伸晃環境相が明らかにした。慶良間の海の価値が高く評価された朗報として、心から喜びたい。

 慶良間海域は現在、国定公園に指定されている。環境省はこの海域の優れた特性について、浅瀬部分の透明度が高い海域景観のほか、(1)サンゴ礁には多様なサンゴが高密度に生息し、沖縄島周辺海域への幼生の供給源として重要(2)ザトウクジラの重要な繁殖海域-である点に着目。「沿岸から海域にかけて多様な生態系を有しており、我が国を代表する傑出した地域である」と評価している。
 国立公園化に伴い、浅瀬部分の「海域公園地区」ではサンゴ生息地への立ち入りやごみ捨て行為、加工販売など商業目的のサンゴ漁などが新たなルールで規制されることになる。このため、観光客向けのダイビングなど海を生活の糧とする事業者や住民の理解と協力が欠かせない。環境省など関係機関は、住民への説明や合意形成作業を丁寧に進めてほしい。
 環境省によると、慶良間海域ではこれまで魚類が約360種、造礁サンゴを含む無脊椎動物が約1640種、海藻類が約220種確認されている。夏には主にアオウミガメが産卵のために海浜に上陸し、冬季の1~4月にかけては繁殖活動のためザトウクジラが訪れるなど、年間を通して多様な海洋生物がみられる貴重な地域だ。
 半面、オニヒトデが断続的に大量発生し、サンゴ白化の経過観察が必要であるなど、息の長いサンゴ保全対策の確立が急務だ。
 これまでは地元のダイビング協会などがオニヒトデ駆除や清掃活動を担ってきたというが、今後はサンゴの着実な保護に向け住民参加型の取り組みも求められよう。
 国立公園化をどう慶良間諸島の明るい未来につなげるか。座間味、渡嘉敷両村の知恵の見せどころだ。
 両村は08年にそれぞれエコツーリズム推進協議会を設立し、ガイドラインを策定して慶良間のエコツーリズムを進めてきた。こうした活動の蓄積も生かせるだろう。次代を担う子どもたちの夢を反映させる形で、慶良間の海を守る魅力的な行動計画を策定してほしい。
 県民としても両村の挑戦を温かく支援していきたい。