参院選・経済・財政(下) 消費増税で格差正せるか


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 参院選に突入したが、生活と密接に結び付き、有権者の関心が高い消費増税をめぐる各党の論戦が盛り上がりに欠けている。

 政権への審判の機会となる選挙戦の中で、まず消費増税の是非に立ち返り、深い議論を重ねて国民に判断材料を示すべきだ。その上で、増税された場合の影響もしっかり示してもらいたい。
 前民主党政権と自民、公明の現与党との合意、消費増税関連法案に基づけば、安倍政権は今秋にも2014年4月に税率を8%に引き上げるか否かを決定することになる。
 一定の景気浮揚効果を生み出したアベノミクスだが、消費増税が何をもたらすのか、安倍晋三首相はあいまいにしたままだ。
 財政出動、金融緩和、成長戦略を3本柱とする拡大路線の景気浮揚効果がいつまで続くかは見通せない。200兆円を費やすとされる「国土強靱(きょうじん)化構想」のようなばらまき的経済政策がどんな禍根を残すかは、無駄を省く歳出削減に手をこまねいて財政悪化を招いた歴代政権が証明している。
 国の財政は依然として危機的状況にある。1千兆円に迫る借金は、名目国内総生産(GDP)の2倍を超えている。だからと言って、財政再建を錦の御旗にして消費増税を安易に課すことは危うい。
 消費税率が上がれば、その前の駆け込み需要の反動も出よう。消費意欲に水を差し、消費が落ち込むことは避けられまい。幅広い国民に課される消費増税は、富が上へ上へと吸い取られ、所得が低く生活が苦しい国民の負担感が強まる格差構造を温存しかねない。
 政府の成長戦略がうまく作用しても、景気回復と税収増はまだ先で、株価の乱高下に象徴される先行き不透明感は否めない。
 国民に反対が根強く、避けては通れない重大課題でありながら、特に与党の側に消費増税に対する態度をあいまいにしたまま、選挙戦を進める空気が色濃くないか。
 安倍首相は、4月から6月の経済状況を見極め、今秋にも消費増税を判断するとしている。民主党は増税時には低年金者への手当てが必要と主張する。みんなの党、生活の党、みどりの風は凍結を訴え、維新は危険性を指摘し、共産、社民の両党は中止を公約している。
 消費増税を当然視せず、所得税や法人税、投資税制の在り方も含め、各党に徹底議論を求めたい。