参院選 社会保障 活発な論戦で将来像示せ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 避けて通れないテーマなのに、議論が深まらない。選挙戦での社会保障をめぐる論戦が低調だ。

 国民に負担増や給付減を求める政策を公約で明確にしていない自民党の姿勢が要因として大きい。対する野党側は社会保障拡充策を掲げる政党が多いが、財源的裏付けが乏しい印象を拭えない。
 社会保障制度は国の根幹だ。少子高齢化が進む中、その将来像についてしっかりと論議し改革を進めなければ、重大なつけを次の世代に回すだけである。どの政党、候補者が財政面も踏まえた中身のある政策を提示しているのか見極めたい。
 選挙戦での論戦が盛り上がりを欠く一方で、社会保障をめぐる環境は着々と見直されている。8月からは食費や光熱費などの生活保護費基準額が引き下げられる。
 法律上は2割負担だが特例で1割に据え置かれている、70~74歳の医療費の窓口負担については引き上げの方向だ。政府の社会保障制度改革国民会議は参院選後に引き上げを決める見通しだ。
 公的年金の支給開始年齢の引き上げも進む。会社員の厚生年金は男性は2025年度、女性は2030年度から65歳支給となるが、現在65歳支給の国民年金も含め、67、68歳へのさらなる引き上げも中長期的課題として、国民会議の中では示されている。
 総務省の2012年就業構造基本調査で、全国で介護をしている557万人のうち60歳以上が約5割を占めることが分かった。「老老介護」が今後も増えることが確実の中で、厚労省は介護の必要度が低い「要支援1」「要支援2」向けサービスの介護保険制度からの切り離しを検討している。
 本来なら政権与党は選挙戦で、自らの社会保障政策をきちんと説明すべきだ。選挙後に負担増、給付抑制に基づく社会保障の将来像を示すのは後出しじゃんけんの類いで、国民の不信を招きかねない。
 野党は、年金支給開始年齢の引き上げなど一定の国民負担増を、日本維新の会やみんなの党が掲げる。民主党は年金一元化や最低保障年金制度創設を訴え、生活の党や共産党、社民党なども社会保障給付の充実化などを強調している。
 民主党政権も経験し、国民の目は鍛えられている。少子高齢化の中で国民の負担増を伴わずに社会保障をどう充実させるのか、ここでも丁寧な説明が求められる。