参院選・原発政策 次世代に負の遺産残すな


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 日本のエネルギー政策は一昨年の「3・11東日本大震災」以前の原発推進へ回帰するのか、曲がりなりにも脱原発へ進むのか。今参院選は大きな分岐点となろう。

 自民党は唯一、原発輸出や再稼働を容認するなど原発維持を鮮明にした。与党公明党と野党各党は「原発ゼロ」を訴えている。
 自民党は昨年の衆院選で「できるだけ原発に依存しない社会」を公約に掲げた。参院選ではそれを“封印”し、成長戦略で原発活用や輸出促進を打ち出した。「フクシマ」の教訓や被災者の傷みをどう捉えているのか甚だ疑問だ。
 原発の新規制基準施行を受けて電力各社が次々、原発再稼働の審査を原子力規制委員会に申請した。
 安倍晋三首相は、規制委が新基準に合うと判断した原発は地元同意を前提に再稼働させたい意向だ。経済界は歓迎している。不可解なのは、自民が再稼働の最終的な意思決定方法や責任の所在など重要な点を曖昧にしていることだ。
 民主、公明、みんなの党、日本維新の会は運転開始から40年で廃炉とすることを条件に、当面の再稼働を容認する。生活の党、共産党、社民党、みどりの風は再稼働を認めないという。野党側にも、より説得力のある形で脱原発の道筋を国民に示す責務がある。
 各党は、原発事故の収束や放射能除染をどう加速するのか。原発に替わる再生可能エネルギー拡充策や発送電分離を含む抜本的な電力改革でも立場を鮮明にすべきだ。
 注目すべき動きがある。原発推進のオバマ米政権が国内の全ての火力発電所に新たな二酸化炭素排出規制を導入するなど地球温暖化対策の新行動計画を策定し、再生可能エネルギー利用や省エネを強化する方針を決めた。日本もエネルギー政策や温暖化対策で世界潮流から取り残されてはなるまい。
 原発は「トイレなきマンション」と言われて久しい。放射性廃棄物の再処理や最終処分の方法が定まっていないからだ。こうした中での原発再稼働は、危険な放射性物質の“増殖”をも意味する。これ以上、次世代に負の遺産を残す無責任な対応は許されないと、各党が自覚すべきだろう。
 世論調査で「脱原発」支持が7割前後を占めるなど原発政策見直しを求める国民の声は根強い。各党は民意を真摯(しんし)に受け止め、エネルギー政策に反映させるべきだ。