参院選・尖閣問題 平和的解決の知恵競え


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 尖閣諸島の領有権をめぐる日中の対立で日本政府は6月、中国政府に「領土問題の存在は認めないが、外交問題として扱う。中国が領有権を主張することは妨げない」との打開案を示したという。事態の沈静化へ、外務省を中心にアイデアが浮上したようだ。

 遅まきながらこうした動きが出たことは前向きに受け止めたい。ただ、日本に「領土問題」を認めるよう求める中国がこれを受け入れるかは未知数だ。この間も両国の応酬は収まる気配がなく、水面下の「努力」を覆い隠すような現状は遺憾だ。
 日本政府は9日決定した2013年版防衛白書で、尖閣周辺での中国の海洋活動に「不測の事態を招きかねない危険な行動を伴い、極めて遺憾」と警告した。これに対し中国側は「正常な海洋活動を展開しており、非難されるいわれはない」と強く反発している。
 一方では中国が、東シナ海の日本との中間線近くで新たなガス田開発施設を造り始めたことが発覚。共同開発を「できるだけ早く実現する」とした2008年の合意に反し、日本政府は抗議した。中国側は誠実に対応すべきだ。
 参院選では尖閣に関して自民ほか民主、みんなが「領土問題は存在しない」との立場から日本の主張を周知する必要性を強調。公明は海上保安庁強化や衝突防止の仕組みづくりを求め、共産、社民は軍事的対応に反対し、平和的解決を主張する。みどりは台湾などとの連携、維新は安全保障上重要な土地の取引、使用制限を訴える。
 外交面では領土や歴史認識問題で同様にぎくしゃくする韓国との関係改善も急務だ。米中が経済的な結び付きを強め、中韓も蜜月をアピール。北朝鮮の核・ミサイル問題を抱える中、このままでは日本は孤立しかねないが、経済政策などに隠れて外交の論戦は低調だ。
 尖閣同様に緊張が続く南シナ海の領有権問題をめぐっては、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が「行動規範」の策定に向けた初の公式協議を9月に開くことで一致している。話し合いは一筋縄ではいかないだろうが、尖閣問題にも一つの示唆を与える動きだろう。
 日中の対立で直接影響を受けているのは操業がますます難しくなった漁業者らであることも忘れてはならない。その頭越しに締結された日台漁業協定の見直しなど、論ずるべきテーマはいくらでもある。