非正規2千万人 労働政策の功罪検証を


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 総務省が発表した2012年の就業構造基本調査によると、日本の非正規労働者の総数(推計)が初めて2千万人を超え、2042万人となった。雇用者全体に占める割合も38・2%と過去最高を更新。過去20年間で16・5ポイント増え、正社員を中心とした日本型雇用の激変がより鮮明になった。沖縄の非正規労働者の割合は44・5%と全国一高い。現実を重く受け止めたい。

 政府は、雇用の歪みを早急に正すべきだ。県民所得が全国最低水準の沖縄も産官学が英知を集め、非正規労働者の正規化や賃金底上げなどで政策支援を急ぐべきだ。それなくして個々人の明るい未来も、県勢の発展もおぼつかない。
 今回の調査によれば、雇用者全体のうち正規労働者が121万人減少する一方で、パート・アルバイトは101万人、契約社員は65万人増加した。厳しい就職環境で正社員になれない大学生や高校生も多く、15~34歳の非正規労働者やニートの割合が増加。年金受給開始年齢の引き上げを受け、60歳の定年を迎えた正社員が非正規で再雇用される事例も増えた。
 安倍政権は、賃金が低く雇用も不安定な若者の増加を懸念。成長戦略で勤務地や労働時間が限られた「限定正社員」の普及を打ち出した。雇用期限がなく定年まで働けるほか、介護や子育てとの両立などライフスタイルに合わせた働き方などの利点がある。半面、限定正社員は昇進や給与水準で正社員より不利となる場合が多い。決められた勤務先が廃止されれば、解雇されやすいとの指摘もある。
 厚労省は、14年度に限定正社員の雇用管理ルールとなるガイドライン策定を目指す。経営側はリストラをしやすい“便利な正社員”の確保を期待するだろうが、制度論議は労働者の雇用の安定と質の向上が肝心であり、持続可能な雇用制度の再構築が重要である点を踏み外してはならない。
 日本企業は国際競争に勝ち抜くとの大義名分の下、従業員の削減や非正規化、賃金抑制、工場の海外移転などを進めてきた。労働者派遣法改正で製造業への派遣が解禁となった04年以降、顕著な動きだ。多様な産業分野での非正規雇用解禁が、産業空洞化や格差社会を助長した側面があったことも銘記したい。雇用環境の改善は、少なくともこの十数年の労働政策の功罪を検証して進めねばならない。