参院選・教育政策 子どもの未来どう支えるか


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 次代を狙う個性豊かな児童生徒をどう育むか。教育政策は国民の大きな関心事だ。影響を受ける対象者が多く、財源の手当ても欠かせない。各党の施策をきめ細かく見極めたい。

 景気低迷の余波や格差拡大を受け、家計の中で教育費負担は重くなる一方だ。各党の公約で新たな奨学金創設や授業料補助など、家庭の負担軽減策が打ち出された。
 民主党政権で制度化された高校授業料の無償化は各党の主張が割れている。民主と生活の党は継続を訴え、自民党は来年度にも高所得者を除外する方針を示すが、与党の公明には異論があり、決着の行方は不透明だ。
 自民、公明の与党は段階的な幼児教育の無償化を掲げている。3~5歳児の無償化には約7900億円を要するとの試算があり、財源のめどはまだ立っていない。
 ほぼ共通するのは、主に大学生向けの返済不要な給付型奨学金の創設だ。卒業後に返済難に陥り、苦しむ若者が急増している事情がある。各党は、財源難を克服して実現する道筋を示すべきだ。
 学校現場で深刻さが増しているいじめ・体罰問題は各党がこぞって詳細な対策を示している。専門家との連携強化、カウンセラーの常時配置、体罰防止法制定など、各党の独自性がうかがえるだけに、目を凝らして判断したい。
 安倍晋三首相は、教育改革に前のめりになっている。目が離せないのは教科書検定制度の見直しだ。
 自民党は「自虐史観」に基づいた歴史教科書が多いとして、検定基準を改め、アジア諸国との歴史的関係に配慮を求める「近隣諸国条項」の見直しもにらんでいる。みんな、維新もほぼ同調する。
 政治性を帯びた歴史観が前面に出ると、外交問題への発展は不可避だ。沖縄戦での日本軍の「集団自決」(強制集団死)への関与などで史実が曲げられる恐れもある。
 安倍政権は、自治体の首長が教育長を任命、罷免できるようにする教育委員会制度改革も目指している。教育への政治介入を危ぶむ声も根強い。共産党が反対を明記しているが、教育が国家主義に偏った戦前の反省を踏まえつつ、現行制度に課題があるならしっかり改善点を示し、各党が議論を深めてもらいたい。
 各党は教育を政治で染めるのでなく、子どもたちの明るい未来をこそ後押ししてほしい。地域の実情を改善する選択肢に目を注ぎたい。