海兵隊機能明記へ 対話の道開く努力こそ必要


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 防衛省は年内に策定方針の長期的な防衛力整備の指針「新防衛大綱」の中間報告で、自衛隊の「海兵隊機能の充実」を明記する方針を固めた。自衛隊に敵基地攻撃能力を付与することになる。相手国に先制攻撃をしないとの自衛隊の専守防衛の方針を逸脱する可能性が高く、断じて容認できない。

 米軍との連携強化が念頭にあるようだが、米軍の海兵隊は戦闘部隊を強襲揚陸艦やヘリコプターなどから敵地に送り込む「殴り込み部隊」だ。海兵隊の先制攻撃的な機能を自衛隊が持つことになれば、中国だけでなくアジア諸国は警戒するだろう。過去の侵略戦争の反省から戦争の放棄、戦力の不保持を掲げる憲法9条と相いれない方針を大綱に明記すること自体問題だ。
 防衛省は自衛隊に海兵隊機能を持たせることで、日米の共同運用能力が高まるとの立場だ。この延長線上にあるのは憲法が禁じる集団的自衛権の行使容認であることは間違いない。
 2013年版防衛白書にも敵基地を攻撃する能力の保持や集団的自衛権の行使容認に向けた議論が紹介されている。戦後の安全保障政策の枠組みを大きく転換させていいとの国民合意はない。防衛省・自衛隊の先走りは許されない。
 新防衛大綱策定に向けた中間報告は当初、6月をめどに公表する予定だったが、参院選後に先送りにされた。小野寺五典防衛相が6月、敵地攻撃能力や海兵隊的機能保持をめぐる議論について「参院選の情勢に影響を与えるのを避ける必要がある。抑制的に対応してほしい」と省内に徹底したからだろう。政権与党が選挙の争点化を避けるのは、文民統制(シビリアンコントロール)の観点から疑問だ。
 自衛隊が海兵隊機能を持つことになれば、日本国内で海兵隊の駐留が集中する沖縄での共同訓練増加は必至だろう。基地の共同使用も増えるはずだ。すると在日米軍専用施設の割合が74%から減少することになる。実際は自衛隊が入り込んで基地機能強化が進むのに、数字上は米軍専用施設が減少するような作為が可能になる。当然、県民の神経を逆なでする行為は許されない。
 対話の行き詰まりを海兵隊機能の付与など軍事力の増強で対応すれば近隣諸国との摩擦を強め、緊張を高めるだけだ。外交的努力を重ね平和的な解決の道を開く工夫にこそ力を注ぐべきだ。