参院選 福祉・子育て 具体策の有効性を競え


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 子育てがしやすい社会であるかどうかは、その社会が健全か否かを測る物差しになる。障がい者を含むあらゆる人が暮らしやすいかどうかも同様だ。

 そうした生活の質を左右する政策を、参院選で各党が掲げている。どの施策が妥当か、有効性はあるのか、しっかり見極めたい。
 子育て支援の中核は各党とも待機児童解消だ。自民、民主、公明、みんな、共産、社民の各党は認可保育所増設や保育所定員増、認定こども園や保育ママの拡充といった受け皿増強策を掲げる。維新と生活は保育バウチャー制度(必要な人に利用券をあらかじめ配り、利用するときに払う仕組み)導入をうたう。
 「2017年度末までに40万人分の保育の受け皿確保」「5年で待機解消」などと数値目標を示す例もあるのが今回の特徴だ。子ども1人当たり年31万2千円の支給や、病児・病後児保育の充実を掲げる党もある。父母の育児休暇取得を推進するとの施策も目立つ。
 総じて歓迎すべき政策だが、実現までの道筋がいまひとつ鮮明でない。本当に役立つか疑わしい政策もある。各党は徹底的に論戦し、有効だと考える根拠を具体的に示してほしい。
 そもそも日本は子育て関連の公的支出が際立って少ない。教育予算が先進国中最も少ないのはつとに知られているが、保育面でも、例えば3歳以上の就学前教育への公的支出は経済協力開発機構(OECD)加盟28カ国中最下位だ。
 だから少子化に歯止めがかからないのだろう。合計特殊出生率が奇跡的に2以上へと回復したフランスが、20種類以上もの手当を用意して子育て支援を充実させている事実を直視すべきだ。
 国家のために子どもを増やすという視点でなく、子どもや親の視点に立ち、全ての子どもが尊重され、その育ちが等しく確実に保障される社会でなければならない。
 障がい者施策も重要だ。誰でも尊厳を維持しつつ生活できるようにするのは近代国家の原点であり、国民全てに
跳ね返ることを確認しておきたい。
 当事者の声を聞かずに制定したと批判された障害者自立支援法が改定され、障害者総合支援法になったが、批判解消とは程遠い。介助なしに生活できない障がい者に対し「介助を金で買え」と求めるような法は、抜本改正を急ぐべきだ。各党はその形を競ってほしい。