石綿暴露 米軍は全容を公表せよ


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 うるま市の米軍キャンプ・コートニーで、アスベスト(石綿)の使用を知らされないまま高層住宅の改修工事が行われていたことが明らかになった。

 2010年6月から3年間で、少なくとも16事業者125人が石綿にさらされた可能性があるという。下請け業者は「300人以上出入りしていた」と指摘している。米軍は早急に全容を公表すべきだ。
 石綿は吸い込むと肺がんや中皮腫の原因になることが分かっている。石綿被害の潜伏期間は30~40年といわれる。
 作業中に石綿に接触した作業員だけでなく、作業員が持ち帰った作業服などに付いた石綿を家族が吸い込んで発病する恐れもある。作業員とその家族に対する健康調査を直ちに実施すべきだ。
 工事を発注した米軍は、契約と事前調査方法は、日本環境管理基準に従っていると本紙に回答している。米軍の事前調査の結果、工事対象の4棟のうち1棟で石綿を検出した。しかし工事関係者によると、工事終了後の調査で、残り3棟からも配管部分の保温材などから石綿の一種のクリソタイル(白石綿)が検出された。
 3棟で石綿を見付けられなかったのだから、米軍の調査方法が適切だったということにはならない。米軍には説明責任がある。
 石綿保温材などの石綿は、飛散の恐れがある「廃石綿等」に分類される。県内に処理できる業者はいない。もし飛散の恐れのある石綿だった場合、問題は従業員とその家族にとどまらない。周辺住民の健康調査も必要になる。一般廃棄物として処理されたのなら、日本の基準に沿って再度処理し直さなければならないのではないか。
 国、県、うるま市は緊密に連携してこの問題に対処してほしい。基地の立ち入りを強く求め、独自に調査すべきだろう。
 専門家によると、米国では基地内汚染が分かった場合、環境保護庁長官が基地への立ち入りや記録の閲覧・複写、サンプリングを行える。日本での米軍基地への立ち入りは米側による許可制であるのは、明らかな二重基準だ。立ち入りを認め、日本の国内法に従うよう、日米地位協定の改定を求めるべきだ。
 米軍は、早急に原因を究明すると同時に、全ての基地で石綿の使用状況を総点検し県民に公表すべきだ。