那覇市議選 共に市の未来考えよう


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 任期満了に伴う那覇市議選が21日、投開票を迎える。那覇市は4月に中核市に移行しており、県から多くの権限が委譲され、県都としての役割の重要性が高まっている。今回の市議選は中核市移行後初の選挙であり、市政の方向性を決める極めて大切な選挙だ。有権者は各候補者の政策を見極めた上で、投票の権利をしっかり行使してほしい。

 那覇市の喫緊の課題は、子育て環境をどう改善するかだ。公立・認可保育所に入れない待機児童の多さは深刻だ。今年4月現在で待機児童数は439人で、人口10万人当たり135・8人だ。全国42市ある中核市の中で最も多い。立候補した57人のうち80%の46人が力を入れたい政策・課題について「子育て支援、教育行政」を挙げるのも当然だ。当選後は公約を速やかに実行してほしい。
 交通渋滞解消も差し迫った問題だ。2010年度の国土交通省などの調べでは、那覇市は朝夕の自動車の移動時速が12・9キロで全国ワーストだ。移動手段を自家用車から公共交通に移行するためにも、路線バスの利便性向上、モノレールの活用促進、次世代型路面電車(LRT)の導入など総合的な施策を推進する必要がある。市議会は4月に交通政策で市に提言している。取り組みを継続してほしい。
 市議選の投票率は1997年から50%台で推移し、低迷傾向にある。前回は56%だが、今回は参院選との同日選となり、投票率向上に期待がかかる。さらに市は今回から初めて大型商業施設2カ所を期日前投票所に加えた。買い物ついでに投票できる今回の対応は投票率を上げる取り組みとして評価したい。
 那覇青年会議所と県内大学生らが「投票済証」の提示で飲食店の割引が受けられる「選挙割り」という新しい仕組みを生み出した。若者の選挙離れを食い止める手段として県内全域に広がってほしい。
 一方で公職選挙法違反と思われるポスターやのぼりが市内に氾濫している。各候補者陣営はこうした行為こそ、政治離れを生む要因であることを自覚し、即座に撤去すべきだ。
 今回の市議選は中核市にふさわしい自治をどう築いていくかを占う選挙だ。さらに、アジアに開かれた沖縄の玄関口として、那覇市の将来をどう展望するか。チェック能力と提案力を兼ね備えた議員、議会の誕生を期待したい。