意見書2千超 豊かな海喪失への危機感

 名護市のキャンプ・シュワブ沖の大浦湾を船で巡り、晴天時に見下ろすと、水深十数メートルの海底の砂の模様までくっきり浮かぶ。

 「透き通る海」の形容詞そのものの豊かな海を埋め立てて、新たな米軍基地を造る計画への強い危機感が2千を超える声に示された。
 米軍普天間飛行場の代替基地の名護市辺野古沖建設に向けた、沖縄防衛局の埋め立て申請書に対する2千超の意見書が県に届いた。埋め立て事業に対する意見書としては、全国的にも最多水準の数だ。
 提出者には、環境団体、特定非営利活動(NPO)法人などに加え、国際的な海洋生物学者が名を連ねる。環境保全の危うさ、手続きの正当性への疑念に加え、沖縄に根を張る生活者、研究者ならではの、駄目なものは駄目だという強いメッセージも込められている。
 県は意見書を出した人が利害関係人がどうかを精査した上で、埋め立ての可否を判断する。仲井真弘多知事はこれまでも新基地建設は困難との認識を繰り返してきた。慎重に意見書を読み込み、知事は埋め立て拒否を決断すべきだ。
 意見書提出は、新基地建設に向けた行政手続きに対する市民意見を募る最後の機会だった。それだけに、環境保護団体などが幅広く提出を呼び掛けていた。一人一人の見解を記す労力を伴うだけに、主権者としての高い“本気度”が伝わってくる。
 米軍基地問題をめぐり、沖縄社会が奪われてきた自己決定権を取り戻す営みの中で、環境を守る意識が重みを増した証左だろう。
 大浦湾内には、ジュゴンが好む海草藻場があり、湾内には国内最大規模のアオサンゴなど、サンゴ群集が点在する。山原の緑濃い山に連なる河口部には干潟もあり、ウミガメの産卵地もある。
 埋め立て用の海砂採取地4カ所は本島北部にあり、ジュゴンの回遊ルートや藻場と重なり、環境影響評価の再実施を求める意見もある。海兵隊が運用する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備を見越し、不快感を与える低周波音対策が全くない点など、実効性ある環境保全措置が盛り込まれていない点を鋭く批判する見解には説得力がある。
 県内屈指の生物多様性を誇る辺野古海岸域と大浦湾を埋め立て、米軍基地を建設する愚行は国際的な非難を免れない。日米両政府はそれを自覚すべきだ。



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