自公参院選圧勝 より謙虚な政権運営を 県内移設は撤回のとき

 第2次安倍内閣発足後、初の参院選で自民党が圧勝した。自民、公明両党が非改選を含めた過半数(122議席)を確保、参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」は解消される。安倍晋三首相は衆参で安定多数を得たからこそ、より謙虚に政権運営に努めるべきだ。

 自民公認・推薦候補が全国各地で勝利する中、沖縄選挙区は憲法改正や米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設などに反対する現職の糸数慶子氏が当選した。政権与党は沖縄の民意をしっかり受け止め、県内移設の日米合意見直しに本腰を入れて取り組むべきだ。

二分する国論

 今選挙は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や憲法改正、原発再稼働の是非などで論戦を展開した。国民は安倍政権に一定の評価を下した。ただ、野党の小党乱立状態が自民に有利に働いた側面もあり、必ずしも国民の積極的支持による圧勝とは言えまい。
 共同通信社が4回実施したトレンド調査では、投票先決定の基準として「景気や雇用など経済政策」が35%超、「年金や医療など社会保障」が25%前後と高い数値を示した。政権はこの国民の期待に全力で応えねばならない。
 各種世論調査では脱原発や原発再稼働反対が過半数を占め、改憲や環太平洋連携協定(TPP)などの是非も国論を二分している。
 安倍首相は9条を含む憲法改正に強い意欲を示した。しかし自民憲法改正草案に対し、改憲論の憲法学者を含め国民の懸念は根強い。
 権力の乱用を縛る立憲主義を放棄するのか、人権規定の大幅後退ではないか、自衛隊を国防軍化して日本を「戦争をできる国」にするのか-など、憲法論議がこれほど過熱した選挙は極めて異例だ。
 国家の命運を左右する政策では、世論を十分くみ取ってほしい。安倍首相は、国会の数を頼みにした強権的政治は厳に慎むべきだ。
 アベノミクスが掲げる「三本の矢」のうち、金融緩和は円安株高を誘い景気回復への期待を高めた。半面、原材料価格高騰、電気料金値上げなど副作用が懸念される。
 財政出動も危うさがつきまとう。国、地方を合わせた借金が一千兆円にも上る危機的状況下、自民は「国土強靭(きょうじん)化構想」に10年間で200兆円を費やすという。震災復興など必要不可欠な事業は理解できるが、かつてのバラマキ型公共事業を復活するなら疑問だ。
 成長戦略は具体化が遅い。もたついていると、賃金は上がらず物価高にさらされる庶民の暮らしが干上がってしまう。経済や生活が劇的に改善しない限り、消費増税は凍結も視野に入れるべきだ。

沖縄に民主主義を

 普天間飛行場の返還問題に対する沖縄の民意は明解だ。糸数氏も、自公が推した安里政晃氏も県内移設に一貫して反対した。最新の琉球新報の世論調査でも74%が県内移設にノーの意思を示した。
 自民党本部は、自民県連の「県外移設」の意向を無視して、党公約に辺野古移設を明記した。政権与党は、沖縄の民意や自然環境の保護を求める世界潮流も直視し、日米合意の破綻を悟るべきだ。
 繰り返し指摘してきたが、県知事や県議会、県下41市町村の全首長、全市町村議会が辺野古移設に反対している。民主的手続きを一顧だにしないのはアンフェアであり、民主国家とは言えない。日米は民主主義、基本的人権の尊重を共通の価値観だと盛んに喧伝(けんでん)する。ならば、沖縄にもその民主主義をきちんと適用してもらいたい。
 尖閣諸島や竹島の領有権問題では、中国、韓国と対立したままだが、そろそろ首相自ら問題解決に乗り出すべきだ。その場合、武力による解決は国際法上も禁じられており、選択肢になり得ない。
 安倍首相は領土ナショナリズムの沈静化に努めつつ、尖閣、竹島問題の平和的解決に向けて中韓首脳に会談を働きかけるなどリーダーシップを発揮してほしい。「戦争宰相」ではなく、「平和宰相」として名を残してもらいたい。