投票率 政治教育の充実を急げ


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 投票率の低落傾向に一定の歯止めはかかったが、かといって手放しで喜ぶわけにはいくまい。

 第23回参院選沖縄選挙区の投票率は53・43%となった。前回2010年の52・44%を0・99ポイント上回ったが、県内で実施された参院選としては補選を含め過去3番目に低い投票率だった。
 一方、全国の投票率は52・61%で、こちらも過去3番目の低投票率だった。全国の都道府県で前回を上回ったのは唯一沖縄だけだったが、到底、胸を張れる数字ではない。
 全国的に投票率の低落傾向が続いている背景には、国民の意思を的確に反映できない政治に対する根深い失望と不信があるといっても過言ではないだろう。
 政治が国民から遠くかけ離れた存在になってしまっていないか。為政者の責任は極めて重大であることは指摘するまでもないが、政治に関わる一人一人が胸に手を当てて考える必要がある。
 沖縄選挙区の投票率が辛うじて踏みとどまったのは、那覇市議選と同日選挙になったことが大きい。那覇市の投票率は59・59%と県内11市で最も高く、前回を6・19ポイント上回った。
 那覇市議選の投票率も60・14%と前回の56・0%から4・14ポイント改善した。60%以上に回復するのは1993年以来20年ぶりで、相乗効果は明らかだ。
 特に市議選では、期日前投票が初めて市内の大型商業施設2カ所で実施されたことが、投票率を押し上げたとみられる。今回の期日前投票数は有権者数の16・52%に当たる4万968人で、商業施設2カ所で投票をした人が半数以上を占めた。実際の投票行動を促した取り組みと評価できる。今後さらに発展させる上でも、具体的かつ詳細な検証作業を求めたい。
 一方、今回の参院選からインターネットを使った選挙運動が解禁された。投票率向上が期待されたが、結果を見る限り不発に終わったと指摘せざるを得ない。ただ、ネットを通じて、若い世代を政治に引きつける可能性までもが否定されたわけではない。
 選挙は民主主義の基盤であり、政治に関心を持つことが、未来を希望ある社会に変えていく第一歩になる。政治への無関心は、民主主義を機能不全に陥らせるだけだ。子どもの段階から、選挙の意義や役割を学び、判断力を培う政治教育の充実を急ぎたい。