境界柵を新設 強権行使で混乱招くな


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 沖縄防衛局は米軍普天間飛行場北側の第3ゲートに新たな境界柵を設置した。米側の要望に基づき日米合同委員会の承認を経て工事に踏み切った。ゲート入り口の芝生の斜面ではこれまで、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に反対する住民が座り込んで抗議行動を続けてきた。今回、この芝生の斜面外側に境界柵が設置され、住民は座り込みができなくなった。オスプレイ配備に反対する県民の大多数の声に耳を貸さず、住民の合法的な抗議行動の排除が目的に見える。抗議封じのための柵の設置なら、憲法上も問題ではないか。

 新たな境界柵設置について、沖縄防衛局の土木課長は現場で、住民側弁護士らに基地の境界線を明確にするためだと説明した。その一方で「中に侵入するという部分もありますので」と述べ、住民が芝生斜面に立ち入ることを阻止する目的を事実上認めた。
 日米両政府は今月28~31日にもオスプレイ12機を岩国基地に搬入すると発表している。12機は8月上旬にも普天間飛行場に追加配備される予定だ。今回の境界柵設置は追加配備で再び高まる反対運動を押さえ込むのが狙いだろう。
 昨年10月に12機が強行配備された後、県内では知事と41全市町村長が反対を表明し、県議会と全市町村議会が反対決議をした。追加配備も容認するはずがない。安倍晋三首相は全41市町村長と県議会議長らの署名の入った「建白書」を受け取った際「私も思うところがある。(沖縄の)意見に耳を傾けながら、これからも基地負担軽減を含め、頑張っていきたい」と述べた。今回の措置は耳を傾けるより、沖縄の民意を封殺する方向にかじを切ったと言うほかない。
 工事着手の時期、仕方も卑劣に映る。自民党が圧勝した参院選開票翌日の夜に動いた。工事着手は抗議行動の住民が帰った後の午後8時ごろ。報道機関に境界柵設置が発表されたのは午後8時半で、既に工事が始まっていた。工事阻止を回避しようとしたのだろうが、こそこそした行動は2011年末の真夜中に防衛局が県庁に普天間飛行場移設の環境影響評価書を強行搬入して県民の反発を招いた姿と重なる。
 政府が住民の非暴力的な意思表示を力でねじ伏せるなら「強権政治」の批判を免れない。県民の声に誠実に耳を傾け、オスプレイ撤去こそ米側に要求すべきだ。