ダイオキシン検出 徹底した調査、情報開示を


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 これは由々しき事態だ。沖縄市の米軍基地跡地にあるサッカー場で発見されたドラム缶周辺にたまっていた水から、環境基準値を超えるダイオキシンが検出された。

 ドラム缶には、ベトナム戦争時に枯れ葉剤を製造していた米大手企業の社名が記されていることから、沖縄の米軍基地で枯れ葉剤が貯蔵されていた疑惑がさらに濃厚となっていた中でのダイオキシン検出である。
 枯れ葉剤に猛毒のダイオキシンが含まれていたことは知られている。しかし、今回土壌調査をした沖縄防衛局は、枯れ葉剤に特有のダイオキシン成分の一部が検出されなかったなどとして、ドラム缶の中身は枯れ葉剤とは断定できないとの見解を示している。
 慎重を期すのは理解できるが、これで枯れ葉剤疑惑が晴れたわけではない。仮に枯れ葉剤ではないとしても、環境基準値を超えるダイオキシンが検出されたこと自体が看過できない問題である。
 少なくとも除草剤などが入っていて、土壌を汚染したことは疑いようがない。ダイオキシンは分解しにくく、毒性は半永久的という。米軍の管理体制はどうなっているのか。有害物質入りのドラム缶を遺棄したのか。徹底的に調査して真相を解明する必要がある。
 日本政府は米政府・米軍に対し化学物質の管理履歴などの記録や文書を要求すべきだ。情報開示の透明性が確保されない限り、県民は到底納得も安心もできない。サッカー場利用者らの健康調査なども視野に入れるべきだろう。
 米退役軍人の証言や米陸軍化学物質庁(CMA)作成の報告書などからも、沖縄に枯れ葉剤が貯蔵されていた可能性は極めて高い。
 1971年に米国防省がベトナム戦争に関連した化学兵器について作成した文書には、嘉手納基地に「除草剤」が貯蔵されていると明記されていることも分かっている。今回サッカー場から出てきたドラム缶は、その公文書の内容とも付合する。
 米国防省は沖縄での枯れ葉剤の貯蔵、使用を否定している。確信があるのなら、日本側の調査に真摯(しんし)に協力し、県民が納得のいくように説明責任を果たすべきだ。
 今回の問題で徹底した調査がなされるか、事後処理がどう図られるのかは、今後の米軍基地の返還、跡地利用問題にも重大な影響を及ぼす。そのことも肝に銘じて、国や県は厳正に対処してもらいたい。