無人機導入 緊張増幅させ容認できない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 防衛省は年末に策定する「新防衛大綱」に向けた中間報告概要に、米無人偵察機グローバルホークのような無人機の導入を明記した。

 導入の必要性について中間報告概要は、尖閣諸島周辺での中国による海洋活動の活発化や北朝鮮の核・ミサイル開発の高度化をにらみ「各種事態の兆候を早期に察知する能力向上のための装備の充実が不可欠」と指摘している。だが無人機導入は安易な攻撃を招き専守防衛の方針から逸脱しかねず認められない。
 グローバルホークは、全長約14・5メートルの大型無人偵察機だ。高高度で長時間飛行でき、赤外線センサーで夜間や悪天候下でも目標を捕捉できる。米軍がアフガニスタン攻撃やイラク戦争で使用した。
 北朝鮮のミサイル警戒のため、米軍はグローバルホークの三沢基地配備を検討している。日本が同機を購入すれば、情報収集・分析に関して日米一体化が進む。中国、北朝鮮、ロシアなど周辺国は日本に対する警戒を強め、逆に緊張の増幅を招きかねない。
 無人機は偵察だけでなく攻撃能力を備えることができる。無人攻撃機プレデターも、開発当初は偵察専門だった。無人機はアフガニスタンやパキスタンで誤爆を繰り返し、多くの民間人を犠牲にした。このため非人道的で安易な攻撃につながると批判されてきた。
 無人機による攻撃は、民間人と軍人を区別して攻撃することを定め、多くの民間人被害が出る攻撃を禁じたジュネーブ条約の規定に反する疑いがある。
 中間報告の問題点は無人機導入にとどまらない。敵基地攻撃能力の保持に関する検討開始や、海兵隊機能の確保を柱に据えている。
 米海兵隊は戦闘部隊を敵地に送り込む「殴り込み部隊」だ。敵基地攻撃能力を保有し、海兵隊機能を確保するというのは、先制攻撃をしないという専守防衛の方針から逸脱することになる。憲法が禁じる集団的自衛権の行使を可能にする新防衛大綱は容認できない。
 新防衛大綱策定に向けた中間報告は当初、6月をめどに公表する予定だったが、参院選の情勢に影響を与えるのを避けるため先送りにされた。
 本来なら選挙の争点とすべき内容を伏せ、自民党が圧勝したとたんに発表するやり方は公正ではない。国民の合意なく、数の力で防衛の基本方針を根底から覆す手法は危険であり、認められない。