法廷内映像制限 「開かれた司法」が泣く


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 米軍のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設に反対する東村高江の住民らを追った琉球朝日放送(QAB)のドキュメンタリー番組「標的の村」の劇場版映画に対し、福岡高裁と那覇地裁が法廷内や裁判所敷地内での取材映像を使用しないよう求めていた。

 映像使用は、報道機関に撮影を許可している「当該事件に関する報道」の目的から外れていると主張し、使用した場合には「何らかの対応をする」と、その後の取材を制限するかのような見解も示していた。取材、報道の自由を侵害しかねない由々しき問題だと言わざるを得ない。
 高江周辺では米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリパッド移設工事が進められている。6月下旬には、建設に反対する住民らの座り込みなどで工事を妨害されたとして、国が住民の通行妨害禁止を求めた訴訟の控訴審判決があり、高裁那覇支部は通行を妨害しないよう命じた一審の那覇地裁判決を支持、住民側の控訴を棄却した。
 QABは一審や控訴審の口頭弁論の代表撮影や住民が裁判所に入る映像を使用しようとしている。記録映画は生活や自然環境への影響を強く懸念する住民らが、ヘリパッドなどに反対する様子を伝える内容だ。国が住民を訴えた同訴訟に関する映像の使用は、問題を伝える上でも自然であり、むしろ不可分の存在かもしれない。
 裁判所側は判決内容などを伝える記事やニュースなどの裁判報道に当たらない「目的外使用」だとして映画での映像不使用を求めたというが、疑問が多い。内容がいけないのか、そもそも「目的外」だとどういう理由で判断したのか。裁判所側は十分に答えていない。
 「何らかの対応」については、本紙などが取材を始めた後に「映像の差し替えを求める意図も権限もない」「不利益な措置などは取らない」と弁明した。外部にもその事実が明るみになったことから、報道を抑えるかのような当初の対応を一変させた、とみられても仕方あるまい。
 法廷内のカメラ撮影は公判秩序などの観点から基本的に禁止されており、報道機関は裁判長などの判断で開廷前2分の代表撮影といった条件で許可されている。プライバシー保護には当然留意すべきだが、法廷の公開は憲法が定める大原則だ。今回のような対応がまかり通れば、司法制度改革が掲げる「開かれた司法」の看板が泣く。