ダイオキシン 管理履歴を公表せよ


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 疑惑は深まり確信に変わりそうだ。米軍基地返還跡地の沖縄市サッカー場で見つかったドラム缶の周辺液体や付着物の一部から、枯れ葉剤の主要成分の一部や有害物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)、ヒ素が次々と検出された。

 沖縄市の独自調査で明らかになったもので、調査を依頼された研究所は枯れ葉剤に加えて「その他の有害物質による複合汚染」と結論付けた。
 有害物質はドラム缶が見つかった場所だけにあったのかどうか分からない。米国はただちに化学物質の管理履歴を公表すべきだ。米本国なら当然の措置だろう。
 検出されたダイオキシン類は水質基準値の280倍、土壌基準値の8・4倍の高濃度。その中に、ベトナム戦争で使用された枯れ葉剤「エージェント・オレンジ」の主要成分「2・4・5-T」と、その製造段階で生じる、ダイオキシン類の中で最も毒性の強い「2・3・7・8-TCDD」の両方が含まれていた。
 枯れ葉剤に詳しいジャーナリスト・中村梧郎さんは「意図的に枯れ葉剤が投棄された場所でないとここまで高い濃度にならない。枯れ葉剤汚染土壌だと断定できる」と指摘している。
 腑(ふ)に落ちないのは、農薬の可能性がある、とした防衛省沖縄防衛局の検査結果と異なる点だ。防衛局は、枯れ葉剤を農薬の「除草剤」として扱うことで問題を矮小(わいしょう)化しているのではないか。
 日米両政府は枯れ葉剤の存在を否定するが、沖縄に存在していた証拠ともいえる証言や記録がある。
 例えば沖縄の毒ガス撤去に関する国防長官名文書に「枯れ葉剤作戦及び農作物に対する限定的で選択的使用のための枯葉剤使用に関する能力及び方針は保持すべきである」(1969年10月)とあり、枯れ葉剤の存在を示唆している。
 韓国では米兵の証言に基づいて韓米合同調査委員会を発足させ、地下水汚染を発見した。韓国最高裁は先日、米国の枯れ葉剤製造会社に損害賠償を命じている。
 同様に日米両政府は、敷地全体の埋設物を調査して平面的な汚染の影響と、どれだけの深さまで土壌が汚染されているか明らかにし、安全対策を講じる責任がある。
 いまだに枯れ葉剤の存在を否定し、汚染を放置するような態度は、沖縄県民に対する背信行為である。責任放棄は許されない。