ネット依存 「情報教育」が必要だ


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 衝撃的な結果だ。インターネットへの病的な依存が疑われる中高生が8%に達し、全国で51万人に及ぶと見られることが分かった。

 恐るべきまん延ぶりだ。厚生労働省の研究だが、全国で10万人近くが回答した大規模な調査だから信頼性は高い。予防教育や診療態勢構築など対策を急ぎたい。
 オンラインゲームやメール、SNS(会員制交流サイト)などネットの利用は広がる一方だ。
 厚労省の調査で、1日のネット利用時間が5時間以上という生徒は中学生で9%、高校生で14%にも上った。さまざまな経験を積んで世界を広げなければならない子供たちが、これほどの時間を仮想空間に費やしてしまうのは社会的損失と言えるのではないか。
 ネット依存になると画面の明るさの影響で夜に目がさえて昼夜逆転の生活となり、睡眠障害につながりやすい。実際、依存の強い中高生の6割は睡眠の質が悪いとの自覚を持つという結果が出た。
 悪化するとネットに夢中で食事も取らず栄養失調になったり、歩かないために骨がもろくなったりするという。その依存が8%にも達するとは切迫した事態だ。
 携帯などでのネット利用は目に付きにくいから、保護者も子供の依存に気付かない傾向がある。生徒自身、依存という自覚が乏しいのが通常だ。研究者は「生徒が遅刻したり授業中に居眠りしたりすると注意が必要」と、依存のサインを見逃さないよう訴える。
 「情報教育」が必要だ。20年ほど前、カード破産が社会問題化した際には消費者教育の必要性が叫ばれ、実際、高校などでの教育に取り入れられた。それが一定の効果を上げたのは確かだろう。ネット利用でも早急に導入すべきだ。
 専門家は「ネット利用は1日2時間程度が正常な範囲だ」と指摘する。家庭でもよく話し合い、ルールづくりをしたい。長時間を費やすことの悪影響をきちんと実感させるプログラムを構築し、周知したい。
 もう一つ問題なのは治療の道筋すら整っていない点だ。国内には治療できる医療機関がほとんどないのが実情で、支援に当たる自助グループなども育っていない。
 治療体制整備が急務だ。ネット依存に詳しい医師や臨床心理士などを養成する一方、生徒がすぐにカウンセリングを受けられる仕組みもつくるべきだ。