県人口増計画 長期的視点と実効性を


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 将来予測される人口減社会の到来を食い止めるための総合的な施策を展開する「沖縄県人口増加計画」の策定に県が着手した。本年度中にまとめ、ひとまず10年間を計画期間として推進していく。

 日本は国全体としては2004年ごろをピークに、既に人口減社会に入っている。人口減社会が進んでから対策を始めては困難がより大きくなるのは医療や介護、年金などの社会保障問題で頭を悩ませているこの国の現状を見ても明らかだ。
 早い段階からの取り組みは評価したい。ただ、一定の人口規模は地域の活力源として確かに大切だが、単に数字が増えればいいという問題でもない。内実の伴う実効性のある計画にしてほしい。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、国の人口は2010年には1億2806万人で、60年には8674万人ほどまで減少するとみられている。
 一方、県が策定した振興計画「沖縄21世紀ビジョン」などによると、沖縄の人口は25年ごろの144万人をピークに減少傾向に転じると見込まれている。今年5月時点の県の推計人口は141万2893人だ。
 県は県人口を150万人台に乗せることを目標にしている。「健康長寿」「離島や過疎地域など条件不利地域」「婚姻率と出生率」などを対策の主な柱として、女性が安心して社会進出して子どもを生み育て、社会に復帰できる仕組みづくりを目指すという。
 少子化対策、子育て支援策とともに、人口増には雇用の創出とその質の改善が必要だ。高齢化社会が進む中で高齢者の就労機会を確保する一方で、若年層の失業、非正規採用などの雇用情勢を改善することがより求められる。
 沖縄全体の振興計画や将来像とも不可分だ。離島・過疎対策では鉄軌道など交通網の整備も欠かせない。雇用の創出や住環境の整備では米軍基地の返還・跡地利用も視野に入れたものでなくてはなるまい。
 150万人台に乗せたあとはどうするのか。いつまで150万人台を維持するのか、できるのか。人口減社会になっても沖縄の活力を維持できる方策、社会の在り方を考えておく必要はないのか。
 計画策定に際しては多種多様な意見が出てくることだろう。10年、20年ではなく、22世紀も見据えた長期的な視点も示してほしい。