英の原爆使用同意 核廃絶の取り組み急げ


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 1945年8月6日の広島への原爆投下から68周年を迎えた。長崎への原爆投下はその3日後だ。核兵器廃絶の動きが遅々として進まない中、唯一の被爆国として日本が果たすべき役割はますます増していることを、心に留めたい。

 米軍が原爆を投下する1カ月前の45年7月、英国が米側に対して日本への原爆使用に同意すると公式に伝えていたことが米公文書から裏付けられた。一部研究者らには知られていた事実だが、「米単独の決定による投下」という日本人の常識を覆すものだ。米英両国の「共同決定」として原爆投下は決められていた。
 当時のチャーチル英首相が43年8月にルーズベルト米大統領と会談し、原爆の開発や使用に関する原則を定めた秘密協定に署名。44年9月に両首脳は日本への使用方針をひそかに確認している。
 英国の使用同意について慶応義塾大の赤木完爾教授(国際政治、戦争史)は「英政府内には原爆の知識を共有し、国際管理下に置くよう求める意見もあったが、戦後秩序を見据えていたチャーチルが米英協力の方向性を決断し、それに沿って政策が形成された」と指摘。米英の情報共有は広範な戦時同盟協力の一部だったと分析する。
 両国は歴史的にも特別な関係にあるが、人類を破滅に追い込みかねない核兵器の開発や使用を秘密裏に協議してきたことに、慄然(りつぜん)とさせられる。結局見つからなかった大量破壊兵器を「大義」に踏み切ったイラク戦争でも見られたが、第2次大戦当時から21世紀の今も続く両国主導の軍事秩序の在り方を、憂慮せざるを得ない。
 被爆者らと対話するため来日し、沖縄にも足を運ぶ米映画監督のオリバー・ストーン氏は「原爆投下が正しかったというのは神話だ」と指摘した。「米国は原爆投下が戦争を終結させた正しい選択だったと認識しているが、歴史を調べれば必要なかったことが分かる。道徳的にも嫌悪されるべきものだ」とも語っている。
 オバマ米大統領が「核なき世界」を宣言したのは2009年4月のチェコのプラハでの演説だった。だがその後も米国は核実験を続行。国際社会を落胆させ、その一方で北朝鮮やイラクに核保有断念を迫る姿勢が批判されている。
 米国などの核保有国は今こそ核兵器の非人道性を直視し、廃絶へ動きを加速させるべきだ。これ以上失望を招くことは許されない。