日中感情過去最悪 相互理解の機会増やそう


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 日本の民間非営利団体「言論NPO」が中国英字紙と共同で実施した日本と中国での世論調査で、相手国に「良くない印象を持っている」と答えた人の割合が2005年の調査開始以来、最悪となった。日本が前年比5・8ポイント増の90・1%で、中国は28・3ポイント増の92・8%に上った。両国民のこれほどまでの感情悪化は見過ごすことはできない。

 印象を悪化させている主な理由となっているのが日中とも領土と歴史の問題だ。特に昨年9月の日本政府による尖閣諸島(中国名・釣魚島)の国有化後の対立激化が相互不信を増幅させている。地元の沖縄からみれば尖閣諸島が両国民の友好関係に水を差す要因になっていることは極めて残念だ。
 調査では両国間で軍事紛争が起きると思うかとの質問に「起きる」と回答したのは日本人が23・7%なのに対し、中国人は52・7%だった。尖閣では国有化以来、中国の海洋監視船などが領海侵犯するなど挑発的行為を繰り返している。
 一方、日本側も安倍政権が集団的自衛権の行使を禁じた従来の憲法解釈を見直す方針を示し、近隣諸国の警戒を招いている。中国の海洋進出など東アジアの安全保障環境の変化などを理由にしているが、軍事衝突を招く事態は避けなければならない。
 調査で気になるのは相手国への基本的知識が十分でないことだ。相手国に行ったことがある日本人は14・7%なのに対し、中国人はわずか2・7%だ。知人がいる割合も日本人が20・3%だが、中国人は3・3%と低い。一方で「相手国に思い浮かべるもの」では中国人の回答で最も多かったのが「釣魚島」なのに対し、日本人の回答は「中華料理」がトップだ。互いの交流が不足し、相手に対する理解の希薄さを映し出している。
 ただし日中関係が「重要」と答えた人の割合は双方とも7割を超えた。多くの人が関係強化を求めているともいえ、希望を見いだせる側面もある。
 訪中した外務省の伊原純一アジア大洋州局長が5日、中国の外務次官と会談したが、尖閣諸島問題では双方の主張は平行線をたどったようだ。途絶えている日中首脳レベルでの交流実現に向け、両政府は歩み寄る努力をしてほしい。今年は日中平和友好条約の締結から35年の節目の年だ。政治だけでなく民間交流も促進し、相互理解を深化させるべきだ。