米軍飛行制限 時代錯誤の占領意識だ


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 国家主権に対する重大な侵害であり、米軍の無法な振る舞いは断じて許されない。

 宜野座村のキャンプ・ハンセンでの米空軍ヘリコプター墜落事故を受け、米軍が「ノータム」と呼ばれる航空情報を出し、6日から現場周辺上空で報道ヘリなど民間機の飛行を制限していることだ。
 現場上空は日本が管制権を持っており、米軍が直接、飛行を制限する権限はない。米軍から国土交通省への事前連絡はなく、同省航空局は「法的根拠がなく、文書自体に効力はない」と指摘する。
 ただ、この空域の管制業務を担う国交省那覇空港事務所は、付近を飛行する航空機に近づかないよう指示しており、事実上制限を容認している。
 米軍は、事故現場の半径約11キロ、上空約3キロの空域について、15日午後まで制限するとしている。日本航空や全日本空輸などの旅客機は対象外で、報道機関の取材を規制する狙いがあるのは明白だ。実際、6日は報道機関数社のチャーターヘリが現場に近づけず、上空からの取材ができなかった。
 国交省は7日、飛行制限を見直すよう米軍に要求する一方、それでも制限が必要ならば、外交ルートを通じた正式な手続きを求めたとされる。
 単なる手続き論に矮小(わいしょう)化してしまえば、主権侵害にお墨付きを与えるにも等しい。日本政府は厳然とした態度で、根拠のない飛行制限を直ちに撤回させるべきだ。
 墜落したHH60救難ヘリには、放射性物質ストロンチウム90が使用されている可能性も指摘されている。事故に関連する“不都合な真実”を隠蔽(いんぺい)したいとの思惑が米軍にあるとすれば、言語道断だ。米軍が今なすべきことは、事故機に関する徹底した情報公開と速やかな事故原因の究明であり、隠蔽工作などではない。
 米軍の飛行制限は、法治国家を否定する越権行為にほかならないが、その根底には、今なお沖縄に対する占領意識、植民地意識があるのは疑いようがない。
 米軍の時代錯誤にはあきれるほかないが、そうした錯覚を起こさせる現状があるのも事実だ。普天間飛行場の辺野古移設やオスプレイの強行配備など、県民の意思を無視した基地押し付け政策は、占領時代と何ら変わらない。これを追認している日本政府も同罪だ。