ゆいレール10年 交通体系整備を急ぎたい


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 きょう、ゆいレール開業10周年の節目を迎えた。沖縄に戦後初めて誕生した軌道系交通機関だ。県民の財産として大切に育てたい。

 開業はさまざまな効果を上げた。駅周辺は再開発が進み、地価が周辺の相場の数倍に達する例すらある。生活様式の変化ももたらした。通勤・通学の足として定着し、終電意識も徐々に根付きつつある。
 この10年でモノレール直下の国道の交通量は30%余も減った。周辺では逆に増えた道路も多く、渋滞緩和の効果は明らかだ。渋滞に伴う時間の損失も考えると、機会損失を防いだ意味での経済効果は大きい。二酸化炭素排出も削減した。環境改善効果は10年で9億円余に達する。
 渋滞が深刻化していれば道路整備コストはかなりの額に上ったはずで、再開発の経済効果なども考え合わせると、有効な公共事業として一定の評価をしていい。沖縄都市モノレール社が「公共投資として最も成功した事例に入る」と胸を張るのもうなずける。
 運営も一定の成果を上げている。リーマンショックで一時停滞した乗客数も増加傾向を取り戻し、今では1日当たり3万9千人余に上る。開業時より2割以上の伸びだ。1駅区間のみの運賃を設定するといった工夫が大きい。大きなイベントの際に臨時ダイヤで殺到する客をさばくなど、運行ノウハウを蓄積した結果でもある。
 とはいえ課題は山積だ。減価償却前利益は伸びているものの初期投資の負担は依然重く、累積赤字は今なお膨らんでいる。県などの補助が要らなくなる自主経営可能年次は9年も先だ。
 需要喚起には何より交通体系の整備が必要だが、現状はお寒い限りだ。おもろまち駅の交通広場は今も閑散としている。バスの本数が少なく、連結ができていないからだ。バス停と離れた駅もあり、旅行や出張前の重い荷物を持った客には不便この上ない。
 これらは開業前から指摘された課題だが、10年間も解消されていない以上、交通行政不在のそしりは免れない。県や沖縄総合事務局などには、バス路線編再編を促すなど、積極的な取り組みを求めたい。
 浦添市への延伸工事も11月に始まり、18年度末には4駅が開業する。その先に広がる本島縦貫鉄軌道敷設の可能性も視野に入れ、それとの連結を潤滑にするような準備も整えてほしい。