消費増税判断 生身の人間の声を大切に


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 安倍政権は消費税増税が景気に与える影響を検証する「集中点検会合」を設ける。関係閣僚らが月内に有識者約50人から、増税凍結案や、税率引き上げ時期、上げ幅の見直し、増税後の景気腰折れを防ぐ対策などについて意見を聞く。

 首相が庶民の暮らしや地域経済を直撃する増税の判断に、慎重を期すのは当然だ。有識者会合だけでなく、タウンミーティングも開いてはどうか。負担増を迫られる生身の人間の声こそ大切にすべきだ。
 与党幹部や閣僚からは予定通り来年4月の増税実施を求める発言が相次いでいる。背景には法改正が必要な増税凍結や税率引き上げ幅の変更という事態になれば、国債価格が下落して金利が上昇し、景気悪化を招くとの危機感がある。
 これに対し、首相ブレーンの浜田宏一内閣官房参与は安倍政権の経済政策「アベノミクス」の頓挫への警戒感から、4月増税先送りを公言。菅義偉官房長官も「デフレ脱却に政権の命運が懸かっている」と述べ、経済再建の足かせとならない増税の在り方を模索する。
 厳密に言えば、デフレ脱却の成否によって真に命運を左右されるのは、国民生活や日本経済だ。
 アベノミクスで景気が回復基調にあるとは言え、雇用拡大や賃金引き上げなどの恩恵は国民に行き渡ってはいない。首相が経済成長と財政再建の両立の方策をめぐり悩み抜くのは職責上も経済情勢からしても当然だ。4月増税を拙速に判断してはならない。
 格差社会のゆがみを正すには消費税よりも高所得者の所得税や相続税の増税が有効ではないか、低所得者ほど負担感が重くなる消費税の逆進性をどう緩和するか。国民からこうした疑問が絶えない。
 増税よりも無駄な歳出削減が先と考える国民も少なくない。安倍政権は歳出改革よりも「国土強靱(きょうじん)化」構想でバラマキ型公共事業の復活を優先しているのではないか。政権は説明責任を果たしてほしい。意見集約では負担増大が予想される低所得者など生活弱者、中小企業の声もすくい上げてほしい。
 増税に慎重論を唱える内閣官房参与の本田悦朗静岡県立大教授は、景気への影響を和らげるため、税率上げは来年4月から5年間、毎年1%ずつ上げるのが望ましいと提起している。4月増税は自明とは言えない。意見聴取は先入観を排し、公明正大に実施すべきだ。