6次産業化 オンリーワンを生かそう


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 亜熱帯気候で育まれた沖縄特有の農水産物は、磨けば光る原石に例えられようか。1次産業の農林水産従事者が、加工(2次産業)や流通・販売(3次産業)まで手掛ける6次産業化の取り組みが、県内でも活発化している。

 本紙がことし元日号から70回にわたって連載した「つなげる産地力~6次産業化への挑戦」では、県内各地の取り組みを紹介したが、沖縄の潜在力をあらためて実感する。
 ゴーヤー、マンゴー、シークヮーサー、モズクなど全国的に知名度の高い農水産物に限らない。ボタンボウフウ(長命草)や薬草の一種「モリンガ」、白髪染め原料の「ヘナ」など新たな地域ブランドが芽吹いていることも心強い。
 連載を通して、沖縄が有する豊かな地域資源に驚くと同時に、原石を輝く宝石に変えるそれぞれの取り組みに、可能性を感じた読者も多かったのではないだろうか。
 知恵と工夫を凝らした生産者のさまざまなアプローチは、高付加価値化による収益向上にとどまらない。沖縄農業や地域社会の未来を切り開く果敢な挑戦と言える。
 とりわけ6次産業化の取り組みが、多くのハンディを抱える各離島で根付きつつあることは、へき地や過疎地域における活性化対策の観点からも注目すべきだろう。
 与那国町漁協のカジキの肉巻きおにぎり、八重山地域に自生するナンバンコマツナギを活用した藍染め商品の開発、伊是名島特産のコメを活用した米粉麺など、そこだけにしかない「オンリーワン」がめじろ押しだ。
 2011年3月に施行された6次産業化法に基づく認定件数は全国で1497件(7月現在)だが、県内は44件で2・9%を占め全国でも上位に入る。沖縄が持つ多彩な地域資源は、それこそ「宝の山」と言っても過言ではない。6次産業化で沖縄が全国の先導役を果たすことも決して夢ではない。
 もちろん課題も山積する。零細事業者が多いため、資金調達をはじめ、販路開拓など経営ノウハウを持つ人材の確保などだ。国の支援事業では2分の1の補助を受けられるが、数千万円と高額な加工機器設備などでは、残る資金の調達がおぼつかないケースがほとんどという。
 国、県、市町村をはじめ、金融機関や商工団体など関係機関が連携を強め、ヒト、モノ、カネの支援体制の構築を急ぎたい。