学校耐震化 防災拠点として整備急げ


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 県内の公立学校の今年4月1日現在の耐震化率は82・1%と、前年度比で2・2ポイント増えたことが文部科学省の調査で分かった。

 着実に整備は進んでいる印象だが、全国平均の88・3%に比べると6・2ポイント低い状況だ。大地震は沖縄でもいつ起きてもおかしくない。耐震化の作業を加速させ、学校現場での安全確保に万全を期してほしい。
 学校の耐震化は、全国では工期が短く経費も抑えられる改修・補強工事が一般的だが、沖縄は特有の塩害などで建物の老朽化が早いため、改築・建て替えで対応することが多いという。その分工期が長くなることが、耐震化率が低い要因になっているようだ。
 改築に際し、他府県にはない高率補助を活用できることも背景にあるが、ただ沖縄は耐震化と老朽化対策をセットで進めているとの見方もできる。耐震化とともに社会資本の老朽化対策も全国的な課題だけに、耐震率の低さだけを見るべきではないだろう。
 学校施設は児童生徒らの学習・生活の場であるだけではなく、大災害など非常時には地域住民の防災拠点としての役割も果たす。耐震構造であることは不可欠だ。県や市町村は厳しい財政事情の中でも優先的に予算を確保し、緊要な課題として取り組むべきだ。
 しかし、建物の耐震化だけで対策が済むわけではない。
 文科省の調査によると、全国の公立小中学校で天井や照明器具の落下防止といった建物本体以外の耐震化を実施済みなのは、昨年4月1日時点で32・0%で、沖縄は15・4%という低さだ。
 特に体育館などの天井が落下すると、重大事故につながる恐れがある。建物のみの耐震化ではなく、天井や照明器具などの地震対策も的確に進めていく必要ある。
 同様なことは、学校施設における大規模災害を想定した飲料水や非常食などの備蓄にも言える。
 文科省の学校安全調査(昨年3月時点)によると、全国の公立小中学校のうち大規模災害に備えて飲料水や非常食、毛布・寝袋の備蓄をしている学校は30%弱にとどまる。沖縄は飲料水が7%、食料が2%、毛布・寝袋が5%と極端に低い。
 これでは地域の防災拠点としては心もとない。大地震だけではなく、津波への備えも忘れてはならない。普段からの防災教育も含めた総合的な対策が重要だ。