「節目」と追加配備 沖縄に人権はないのか 配備撤回で対米要求を

 米空軍嘉手納基地所属のHH60ヘリの墜落事故を受け、一時中断していた海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への追加配備が再開された。

 追加配備が完了すれば普天間のオスプレイは昨年10月に配備された最初の12機と合わせて24機態勢となり、CH46中型ヘリとの交代が終了する。安全性が強く懸念されている機体が今後、沖縄の空をわが物顔で飛び交うことになる。
 先日の墜落事故からわずか1週間だ。県民挙げての強い反対を押し切り、追加配備を強行した日米両政府に強い憤りを禁じ得ない。

よみがえる悪夢

 きょう8月13日は、2004年の同じ日に沖縄国際大に海兵隊のCH53D大型輸送ヘリが墜落してから9年となる日だ。
 住宅地上空で操縦不能となったヘリが大学の本館に激突し、爆発・炎上した。ヘリの破片は周辺地域に飛び散り、乳児が眠る住宅の寝室も直撃。巨大なローターの破片はバイクを破壊し、家の壁に突き刺さった。乗員3人が重軽傷を負い、住民が死傷を免れたのが本当に奇跡と思える事故だった。
 記憶は今も生々しい。居合わせた人には墜落の恐怖が心の傷として残っている事例もある。こうした中、5日のヘリ事故は多くの県民の悪夢をよみがえらせた。米軍の事件や事故が繰り返される日常では、心の傷を癒やすことも難しい。県民には最低限の人権すら認められないのか。
 沖縄にとって特別な意味を持つ日を前に、米軍は移動を強行した。追加配備の12機は先月末に米本土から山口県の岩国基地に搬入され、普天間への移動を3日に開始。だがヘリ事故を受けて日本政府が追加配備の一時見合わせを要望し、米側が応じていた。
 日本側が一時見合わせを求めたのは事故で米軍機の安全性への懸念がさらに高まったことを踏まえた措置だったはず。機種が違うとはいえ、乗員1人が死亡した事故の原因究明もこれからだ。日程を1週間遅らせたところで、県民がその姿勢を評価するだろうか。事故原因の公表や再発防止策、安全対策に関する説明もないままの強行配備は言語道断だ。
 追加配備の再開は日本側からの「15日の終戦記念日や夏休み時期となるお盆(13~15日)は避けてほしい」という非公式な要請もあり、12日になったとの見方もある。沖縄を愚弄(ぐろう)するにも程がある。
 オスプレイに対して県と県内全ての市町村、全市町村議会と県議会が反対していることは、これまで何度も指摘してきたところだ。

空疎な言葉

 先月中旬の県民世論調査では82・3%が追加配備に反対と答えており、仲井真弘多知事も、追加配備の中止と配備計画の見直しを求める立場に変わりはない。沖縄は繰り返し叫んでいるのに、日本政府は「のれんに腕押し」(知事)の態度を取り続けている。
 安倍晋三首相は追加配備に関し「日米の合意を適切に実施するよう米側と緊密に連携したい」と述べ、安全確保に万全を期す考えを強調したが、地元が日米間で合意した飛行ルールに違反する事例をいくら指摘しても、政府は「確認できない」として訴えを退ける。首相の言葉が、空疎に響く。
 9年前の事故で忘れられない光景がある。国内の民間地で起きた事故にもかかわらず、日本警察の捜査権は米軍に奪われ、キャンパスは米兵に占拠された。視察した政府高官も米軍に制されていた。
 70年近くも前の戦勝国の意向に今も唯々諾々と従い、一方で民主主義の手続きに従って正当に要求し続ける国民の方ばかりを説得しようとする。これが主権を持った独立国家の姿と言えるのか。
 追加配備で問題が終わるわけでもない。機数が倍になれば負担はさらに増す。日本政府が国民の命と財産を米国に差し出すような行為は許されない。配備撤回に向けた交渉を、今こそ米側に強く申し入れるべきときだ。



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