日中友好条約35年 国交正常化の知恵に学べ


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 1978年8月の日中平和友好条約締結から12日で35周年となったが、日中関係はぎくしゃくし、両国とも祝賀ムードが乏しい。

 関係悪化の発端は、尖閣諸島の領有権をめぐる対立だ。昨年4月、石原慎太郎東京都知事(当時)が尖閣諸島購入構想を打ち出し、政治問題化した。野田民主党政権は対中強硬姿勢を強めていた石原氏側が購入すれば武力衝突に発展しかねないと恐れ、昨年9月、魚釣島など3島を国有化した。中国は直ちに抗議し、国有化の撤回を求めた。
 それ以来、日中関係は政治だけでなく、貿易や民間交流を含め多方面で悪化し「政凍経冷」と形容されるほど冷え切っている。
 こうした中、トヨタが中国の大学と大気汚染の原因である微小粒子状物質「PM2・5」をめぐり共同研究を始めた。関係改善を後押しする動きとして評価したい。
 千数百年にわたり積み重ねた日中関係は強化こそすれ、壊してはならない。日中指導層も両国関係の重要性は理解しているはずだ。
 日本政府は尖閣諸島を1895年に沖縄県に編入し、現在も日本の領土として実効支配している。中国も「固有の領土」だと主張し譲らない。沖縄からすれば、尖閣は琉球の時代から琉球人の生活圏だ。激しい言葉をぶつけ合っても生産的ではない。尖閣問題で日中共同研究に着手するなど平和的解決を探っていい時期だ。
 領有権問題は実効支配する国が領有権を主張する他国の声に耳を傾けねば、話し合いの席にさえ着けない。裏返せば、尖閣問題は実効支配する日本が柔軟に対応すれば打開の道が開けるのではないか。
 日中両国は、日中国交正常化の原点に立ち返るべきだ。1972年9月の日中共同声明では、恒久的な平和友好関係の確立に合意し「日本国及び中国が相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えない」と確認した。平和的解決へ向け、尖閣の領有権を事実上棚上げしてきた両国の先達の知恵に学ぶべきだ。
 日本にとって中国は最大の貿易相手国で、今や国家の命運を左右しかねない存在だ。そうした意味でも、安倍晋三首相と習近平中国国家主席は両国で高まる排外主義を沈静化し、持続的な平和と繁栄を見据えた「戦略的互恵関係」の再構築に全力を傾注すべきだ。