南洋群島戦訴訟 国策の犠牲者に謝罪を


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 原告の「沖縄・民間戦争被害者の会」によると、南洋群島の戦争被害で国の責任を問う集団訴訟は初めてだ。国策に基づいて移民し、戦争の犠牲となった人たちに対する国の責任は明確にすべきだ。

 原告側は「住民が死傷したのは、国が戦争回避や非武装地帯設定などの義務を怠ったり、玉砕命令を出したりした結果で、国の国民保護義務に違反する」と主張。「国は南洋群島戦遂行という政策により民間人の生命身体を特別な危険状態にさらした責任を負うべきだ」と主張する。
 第1次世界大戦後、サイパン、ロタ、テニアン、パラオなど太平洋西部の南洋群島は日本統治領となり、多くの日本人が移住したが、その約6割はサトウキビ耕作者ら沖縄からの移民だった。太平洋戦争開戦後に日本が占領したフィリピンなどにも県人が移住したが、その多くが日米両軍の地上戦に巻き込まれており、同被害者の会の推計では、南洋群島とフィリピンを合わせて約2万5千人の県出身民間人が命を落とした。
 1944年7月に米軍が占領したサイパン島では6千人の県出身者を含む在留邦人1万人が犠牲になった。艦砲射撃と空襲の中を逃げ惑い、身内同士で殺し合ったり、投降しようとして日本軍に殺害されたりする悲劇が起き、追い詰められた人々は岬から身を投げた。本土防衛の「捨て石」「持久戦」に住民を巻き込んだ軍、国家の責任は重大で、沖縄戦と同じ構図だ。
 戦争被害について国はこれまで戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づき軍人・軍属、遺族に賠償し、民間人にも「戦闘参加者」との位置付けで同法を拡大適用してきたが、戦死状況を証明できないなどの理由で補償されない事例も多い。
 遺族らの訴えを司法がどう受け止めるのか注目されるが、国策に協力して見知らぬ海外の開拓地に移住した上に、国が始めた戦争の犠牲となった人々に対して、まずは国が率直にわびるべきではないか。
 「国がきちんと謝罪しないままでは戦争が風化してしまう」。訴訟に加わった遺族らは切実な声を上げている。歴史の過ちを繰り返さないためにも、国はその責任にきちんと向き合うべきだ。