ストーン氏来沖 隠された歴史見抜こう


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 県民に勇気と希望を与えるメッセージが発せられた。

 初来沖した社会派の米映画監督オリバー・ストーン氏が講演の中で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対を表明し、民主主義の危機を訴え「世界各地でもっと抵抗(レジスタンス)すべきだ」と力強く語った。
 「歴史を学ぶことで今と未来を変えられる」。ストーン氏と共に米国裏面史「もうひとつのアメリカ史」を製作した、ピーター・カズニックアメリカン大教授も聴衆に訴えた。
 敗戦から68年。今こそ歴史と向き合う姿勢が求められる。
 ストーン氏は広島、長崎への原爆投下は「第2次大戦を早期に終わらせ、米兵の命を犠牲にしないため」と米国で説明されているが「神話」にすぎず、旧ソ連の日本侵攻を食い止める政治的な決定だったと指摘する。
 米国だけでなく日本も真の歴史が隠され、政府に都合のいい歴史が教えられており、戦争中に行った戦争犯罪が否定されていると主張した。日本の侵略に対する認識、「従軍慰安婦」問題などを指していることは明らかだ。
 安倍晋三首相が、政府が認めてきた歴史認識さえも覆そうとしているように見えるからだろう。
 安倍氏は政府主催の全国戦没者追悼式の式辞で「歴史に謙虚に向き合い、学ぶべき教訓を深く胸に刻む」と表現しながら、歴代首相が触れてきたアジア諸国への加害責任と反省の表明、「不戦の誓い」を明言しなかった。
 過去を反省しない姿勢は、日本の「右傾化」を警戒する中韓両国をはじめ、世界中の反発と不信を招きかねないのではないか。
 戦中だけでなく、戦後史についても同様だ。ストーン氏の目に映る戦後の日本は、米国の「衛星国」。主権国家でありながら属国のように追従している。
 在沖米軍が68年間も沖縄に駐留している理由を、冷戦期は共産主義、冷戦後は北朝鮮や中国に対する「抑止力」と日本政府は説明してきた。この説明は「神話」にすぎず、基地の押し付けは政治的理由からだ。
 ストーン氏は離沖前に、沖縄を題材にした映画製作について「これからじっくりと考えたい」と語った。反骨の監督に、日米両政府が沖縄の民意を無視して基地を押し付けてきた歴史と沖縄の抵抗を、ぜひ全世界に発信してもらいたい。